第2次安倍内閣の改造に伴い民間議員メンバー2人の入れ替えが言われ、誰を起用するのか注目された「経済財政諮問会議」の民間議員メンバー4人が5日、菅義偉内閣官房長官から発表された。
伊藤元重東大大学院経済学研究科教授と高橋進日本総合研究所理事長が在留で、東芝の佐々木則夫副会長と三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長の2人が勇退。代わりに日本経済団体連合会会長の榊原定征東レ取締役会長と新浪剛史サントリーホールディングス顧問が就任することになった。榊原氏と新浪氏は近日、諮問会議議員に任命される。
菅官房長官は榊原氏について、東レ社長時代に経営改革を断行したなどをあげ、それらの実績を踏まえたものとし、経団連との連携の在り方などで期待などはないのか、との記者団の問いに「そこは全くない」と、あくまで東レ取締役会長としての榊原氏を起用するのだと強調した。
菅長官は「榊原氏のこれまでの実績などを我が国の経済発展、国家運営に役立てて頂きたいということで、是非、お願いしたいということ」と繰り返した。
しかし、榊原氏が経団連会長であることは紛れもない事実で、榊原氏が経団連会長に就いたとたん、政治献金再開を口にしてきた。企業献金や団体献金が政治との癒着の温床になるため、なくしていこうと代替に政党助成金制度が創設され、実効をあげなければならない中で、これに逆行する考えをお持ちの方のようだとさきのコラムで指摘させて頂いた。政財癒着の象徴にならないよう注視したい。
また、原発再稼働、法人実効税率の早期引き下げ実現、TPP交渉妥結の早期実現、消費税10%への引き上げを予定通り実現させる環境づくりなど、安倍政権とほぼ同じ方向性を目指していることにも注目していく必要がある。
財政経済諮問会議は、さきにも触れたが「内閣府設置法に基づく重要政策会議」で、政府の経済財政運営の司令塔の役割を担っている。それだけに、残り一人の民間議員について誰を起用するのか「労働界の視点を持つ人物を入れるべき」と、さきのコラムで書いたが、ぎりぎりの調整の結果、その人物は労働者の視点も有する新浪氏になった。
新浪氏はローソン社長時代、2013年度から20代後半から40代の社員の個人所得を平均3%引き上げる給与政策をとった人物であり、今年10月にサントリーホールディングス社長に就く予定の人だ。
昨年1月の産業競争力会議では「20代から40代の雇用を増やし、所得を向上させ、消費活力を持たせる施策が重要」と産業競争力強化の原点を働く者の所得向上による消費活力に求めた視点で戦略を展開した。
また「同一労働、同一賃金を実施し、結果として人材の新陳代謝を行うこと」を提起している。あわせて、少子化対策と女性就労施策には「子育て支援産業、健康寿命伸長産業、企業における女性の働きやすい環境づくりを通して、20代から40代の雇用とダブルインカムによる所得を増やし、50代後半から75歳まで働ける仕組み作りを行う」ことや「若い人に早期にポジションを与え、早期退職による50代後半から75歳まで新たに働ける産業を創出していくこと」を提案している。
提案の中には「子育て支援産業からの税収や消費税を原資に、小学校給食の無償化や不妊治療への支援、幼児医療費の減免など」もある。政界でも、財界でも、学者でもない、独創的な視点で、経済財政運営に才能を発揮頂けることを期待したい。(編集担当:森高龍二)