鹿児島には桜島を筆頭に非常に多くの火山地帯が存在する。川内原発の近くには阿蘇カルデラや姶良カルデラなどがあり、超巨大噴火があれば火砕流は原発敷地内にも到達するという意見もある。噴火のサイクル予知も難しく、規制委の見解には疑問が残る。
9月10日、原子力規制委員会は、九州電力<9508>川内原発発電所1号機・2号機が安全対策新規制基準を満たしたという審査書を受け取り、了承した。これを受け、川内原発は今冬にも再稼働される見通しが高まっている。
原発再稼働を急ぐ政府が、地域住民の声と慎重な規制委を押し切った形だ。地域住民からは「避難計画が十分でない」、「福島での原発事故の検証も十分でないのに急ぐ必要はあるのか」といった不安の声が上がっている。
事実、避難計画は規制委の審査対象ではなく、地元に丸投げされている感が強い。薩摩川内市は昨年11月に原子力防災計画・避難計画を策定したが、緊急避難時の高齢者や病人などの搬送や、避難場所の放射能汚染検査の設定、風向きを考慮した避難場所の設定など、詳細は今でもまだまだ見直しが必要な段階だ。鹿児島県や薩摩川内市はそうした見直しや、住民への避難計画の周知徹底を行っているが、国からそうした協力が十分されないまま、新基準審査合格と言われても不安が募るのは当然だろう。
また、規制委は7月に、川内原発発電所1号機・2号機の安全対策について広く一般から意見を募集した。その中には「火山対策が充分でないのではないか」、「火砕流がもしも原発に到達したらどうなるのか」などの意見も寄せられた。これに対する回答は「火山事象が原発敷地内に到達する可能性は小さい」というものだったが、これでは「もしもの時の対策は考えていません」と言っているようなものだ。しかも、こうした一般からの意見を集めておいて、その2か月に急いで新基準合格では、何のために意見を公募したのかと首を傾げてしまう。
住民の安全や福島の検証をないがしろにしてまで、なぜ安倍政権は原発再稼働を急ぐのか。大きな理由として考えられるのは、原発輸出に向けた実績作りだ。8月末に行われたインドのモディ首相来日時にも、原発輸出を見据えた原子力協定早期妥結に向けての話し合いが行われた。この他にも、9月6日には日本の国連非常任理事国入りに向け、安倍首相はライバルだったバングラデシュを訪問。様々な経済支援を約束することで、バングラデシュの理事国立候補辞退を促した。その支援の中には原発輸出による電力支援も盛り込まれている。
安倍首相の積極的な外遊の影には、世界への「日本の誇る原発技術の売り込み」が潜んでいる。あれだけの事故を起こし、その十分な検証も無いまま、「日本はさらに安全な基準を作りコントロールしていますよ」と言いたいがために、川内原発は住民の不安を無視して再稼働への道を進められている。安倍首相は売ってはいけないものを売っている、そう感じるのは私だけだろうか。(編集担当:久保田雄城)