【今週の展望】日経平均年初来高値チャレンジは成功するか?

2014年09月15日 20:17

 前週は、過去のデータでは「先物主導でボロボロ売られる局面がある」はずのSQ週に為替はドル円107円台まで円安が進行し、日経平均株価もTOPIXも5連勝を遂げた。12日の後場に日経平均がマイナスまで下落する局面がきて「最後の最後にどんでん返しなのか?」と思わせたが、中途半端に終わった。円安、株高になった理由はさまざまに言われているが、「2014年9月のメジャーSQ週の出来事」は、最初の印象が基準になって判断にバイアスがかかる「アンカリング効果」にとらわれ、それが市況の現実に見事に裏切られてしまった好例として今後、行動ファイナンス(行動経済学)の格好の教材になるのだろうか? 過去のデータをもとに警告した人は「狼少年」、警戒した人は「ペシミスト(悲観主義者)」呼ばわりだ。

 前週、米ドルも日本株も買われすぎた。そのためもう一度、孤独な「孤高の鳥」になってしまった。どれだけ孤高なのか、12日終値のテクニカルポジションを見てみよう。

 為替のドル円レートは終値107.37円。移動平均線は5日線105.23円、25日線104.25円、75日線102.72円とも全て下にある。5日線でも2.14円、2.03%も開いている。日足一目均衡表の「雲」の上限から5.2円、5.0%も離れた上空を飛ぶ。ボリンジャーバンドの25日線+2σ(第2標準偏差)の107.166よりも上で、その領域に入る確率は5%しかない。25日移動平均乖離率は2.99%もあり、急速な円安による「孤高」ぶりが際立つ。

 日経平均のほうはそこまで孤高ではない。12日終値は15948.29円で、移動平均線の5日線15820円、25日線15534円、75日線15341円は全て下にあるが、5日線とは128円、0.81%離れているだけ。日足一目均衡表の「雲」は15166~15256円で、その上限から692円も上空を飛ぶ。雲は今週「ねじれ」を迎えるが、ここまで離れたら影響はほとんど出ないだろう。ボリンジャーバンドの25日線+2σ(第2標準偏差)の15960円は12日の高値15984円では超えていたが、終値ではわずか12円割り込んだ。25日移動平均乖離率は2.66%、しかし、騰落レシオは131.4に拡大し「買われすぎ」の判断レベルの120をオーバー。ストキャスティクス(9日Fast)は93.44にはね上がり、「買われすぎ」の判断レベルの70~80をオーバーしている。

 このデータを見ると、前週、為替のドル円が107円台の水準まで駆け上がったのは少々スピード違反で、今週は「為替から崩される」というシナリオが容易に想像できるだろう。その節目になりそうなイベントとして16~17日のFOMCがある。そもそも、近いうちの利上げを織り込んでアメリカの長期金利が上昇しこのドル高円安の局面を招いたのだから、イエレン議長が何か慎重な発言をして利上げ期待がしぼめば為替はそれとは逆方向に向かうのが道理。とはいえ、時差の関係で東京市場では16、17日のうちはその影響が出ないというタイムラグがある。それに乗じて行われそうなのが、「日経平均の年初来高値チャレンジ」だ。

 日経平均のザラ場の年初来高値は1月6日の16164円だった。12日はそれにあと180円まで迫り、16000円の大台は指呼の間にとらえた。終値では216円の差があるが、為替のドル円が107円台を維持し、さらに日銀の追加緩和の兆候や閣僚の発言など、ボリンジャーバンドの25日線+2σの15960円を超えて大台に乗せられるだけの好材料が出てくれば、一気に年初来高値を更新する場面もあるとみる。それでも昨年の12月30日の大納会の15320円は、いくら何でも高望みすぎる。終値ベースでは、ドルほどではないが日経平均も「買われすぎ」なので、16000円台乗せは微妙なところではないだろうか。

 そしてFOMCを通過した18、19日は為替で「円安修正」の動きが出て日経平均も「買われすぎ修正」に向かうとみる。その場合の下値は思い切って25日移動平均線の15534円あたりまで想定しておいたほうがいい。前週は円安が急進して出番を奪われ、目立った形では現れなかった「先物売り勢力」が欲求不満をため込んでいて、為替に連動して牙をむく恐れがある。もし「スコットランド独立」という事態になったら一気に大幅安覚悟。アランは「悲観論は気分、楽観論は意志」と言うが、悲観論も意志で唱えるべき時がある。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは15500~16000円とみる。ここまで高値圏にきて、「高値波乱」で200円、300円下げたぐらいでギャーギャー騒いではいけない。16世紀のスペインの思想家にして詩人のサン・ファン・デ・ラ・クルスは、「光と愛のことば」という詩の中で「孤高の鳥」の5番目の条件として、「孤高の鳥は、しずかに歌う」を挙げている。(編集担当:寺尾淳)