ついにiPS細胞の実用化が始まった。公益財団法人先端医療振興財団と独立行政法人理化学研究所は12日、「滲出型加齢黄斑変性に対する自家iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)シート移植に関する臨床研究」における第一症例目の被験者に対し、iPS細胞由来の網膜色素上皮シートの移植を行ったと発表した。
手術は、神戸市中央区の先端医療センター病院で行われた。被験者は兵庫県在住の70歳代の女性で、手術時間は2時間、執刀医は栗本眼科統括部長ら眼科医3名を含む手術チームだった。手術の結果は、約1.3mm×3mmのRPEシート1枚を被験者眼球(片目)の網膜下に移植した。多量の出血等、重篤な有害事象の発生はなかったという。
この臨床研究は、主に科学技術振興機構(JST)の「再生医療実現拠点ネットワークプログラム 再生医療の実現化ハイウェイ」、および「厚生労働科学研究費補助金 再生医療実用化研究事業」からの研究費によって実施されている。
栗本康夫眼科統括部長は「本日の手術が無事に終わって安堵しております。本臨床研究はiPS細胞を使った再生医療の確立という大きな目標に向かっての小さな一歩であり、本日の手術は、その臨床研究全体の中での一つのステップでしかありませんが、大きな節目を乗り越えられた事は大変に嬉しく思っております。」とコメント。また、手術は世界で初めてiPS細胞から作成した組織を患者の体内に移植することを決断した患者には最大限の敬意を表したいとしている。
また、高橋政代プロジェクトリーダーは「手術が順調に終わりましたことが大変うれしいです。 iPS細胞を使った再生医療の第1歩を踏み出すことができたと思います 今、研究を始めてからここまでの長い期間にお世話になった方々を思い出しております。非常に多くの方に応援、サポートをしていただきました。すべての方に深く感謝するとともに、これをスタートとして、必ず治療として多くの方に届けられるように歩みをとめずに進みたいと決心を新たにしております。」とコメントしている。(編集担当:慶尾六郎)