帝国データバンクは、同社が持つ企業概要ファイル145万社のなかから創業100年以上の企業を調査したところ27,335社であることが分かったと2014年9月18日に発表した。
27,335社の内訳として、従業員未満10人以下の企業は全体の52.0%の14,226社、10億円未満の企業が81.6%、資本金でも5000万未満の企業が全体の86.8%を占めるなど比較的小規模企業が圧倒的に多いのが特徴。中小企業庁のデータによると、 12年2月現在の中小企業・小規模事業者数は385万社であるため、帝国データバンクのデータにない小規模企業でも100年以上の伝統ある企業がまだまだある可能性がある。
倒産企業の調査結果によると倒産した企業の平均寿命23.6年(東京商工リサーチ)、35.4年(帝国データバンク)というデータがあることから、おおむね企業の平均寿命が約30年と言える中、小規模な企業が長寿企業の大多数を占めているのは、無理な成長をしないで堅実な経営をしているのではないかと推測できる。
長寿企業を、業種別に見ると、トップ3は、小売業、製造業、卸売業でそれぞれの業種に属する企業全体に占める長寿企業の輩出率が、小売業3.99%、製造業3.78%、卸売業3.38%で、他の業種である建設業、運輸・通信業、サービス業、不動産業などが最高でも1%台であることから、圧倒的に長寿企業の率が高いことになる。
なお、最も多かったのは「清酒製造」で725社ともっとも多く、以下、「貸事務所業」674社、「酒小売」601社、「呉服・服地小売」569社、「旅館・ホテル経営」541社、「婦人・子供服小売」491社などが続く。最近、ガソリンスタンドの廃業が話題になっているが、意外なことに10位で364社ある。
長寿企業の業種を見ると、「清酒製造」、「酒小売」「呉服・服地小売」は、固定客が多そうなので無理な経営をしない限り堅実な経営ができそうだが、実際は清酒の販売量は国税庁に報告によると昭和45年1532千キロリットルから平成22年589千キロリットルへ激減、また呉服・服地販売は立命館大学の調査報告によると2011年度の呉服小売市場規模は,およそ3,000億円と推計されているが最盛期には2兆円産業と言われた時代から見ると衰退が激しい。また、ガソリンスタンド数は、資源エネルギー庁のデータによると平成25年度約3.4万でわずか15年前に比べ約40%減少している。
このようなマーケットの縮小に対応するには、並大抵の努力ではないはずの業種がトップクラスに含まれていることは、伝統を守る意識と革新を実行する優れた経営者が多いのであろうか。これを裏付けるようなデータが、都道府県別の「長寿企業輩出率」である。
帝国データバンクによると、「京都府」の4.00%が最高で、以下「山形県」3.91%、「島根県」3.72%、「新潟県」3.69%がこれに続く。東京都、大阪府、神奈川県など新しく起業する企業が多い大都市の都道府県が含まれていない。新規に起業を目指す起業家にとって、老舗企業の経営哲学を学ぶことは有用であるかもしれない。(編集担当:阪木朱玲)