政府は9月10日、特定秘密保護法の運用基準について、国民から公募された意見と、それを踏まえた修正点を発表した。8月下旬までに公募されていた国民からの意見(パブリックコメント)は、実に2万3千件以上にも及び、その多くが「国民の知る権利が保障されず、秘密の指定が時の政府の意のままになる恐れがある」といった懸念を含んだ意見だったようだ。法律自体の廃止や見直しを求める意見も多かったが、それらは「その他意見」とされた。
修正点は27ヶ所あり、その中には「基本的な考え方の中に、国民の知る権利について記述する」、「運用基準は秘密保護法施行5年後に見直し、その内容を公表する」などの修正が盛り込まれたが、国民の意見を大きく反映したとは言い難い。最も大きな「政府や役所の都合で、秘密の指定が恣意的に行われるのでは」という懸念に対しては、明確な回答を避けるような形で修正はされなかった。
修正に反映されなかったパブリックコメントと政府の回答をみてみよう。「秘密指定要件である『特段の秘匿の必要性』の判断基準は?」という意見に対しては、「多くの要素から総合的に判断する必要があるため、画一的判断基準を設けるのは難しい」という回答だった。秘密指定の解除の判断基準に関しても同様の回答であり、要するにケース・バイ・ケースで秘密指定も解除も判断する、ということになる。これでは、国民のあずかり知らないところで情報が闇から闇へと隠されていくという懸念が、払しょくされたとはとても言えない。
チェック機関についても、人材の選び方や権限の範囲を問う意見が寄せられたが、今後適切な人材を配置する予定、など濁した回答に終わった。他にも、運用基準内の「その他」という曖昧な秘密指定の撤廃を求める意見など、さまざまな声が寄せられたが、修正案には採用されなかった。
国民からの反対意見が多いにも関わらず、強引に法案成立を行い、今回の意見公募に関しても形だけで終わった感が強い。政府は今年12月の秘密保護法施行を予定しているが、施行後の反対意見については、「国民からの意見はすでにしっかり取り入れ、修正しましたよ」とかわされる可能性も高い。しかし、いまだに秘密保護法の廃止を求める声は根強く、市民団体やジャーナリストを中心に、反対運動を行っている人も多い。少しでも疑問を持つ人は「決まってしまったことだし」とあきらめずに、粘り強く声を上げ続けていくことが重要だろう。政府もこうした声ともっと正面から向き合っていただきたい。(編集担当:久保田雄城)