社員の発明による特許権について、企業のものとするか社員個人のものとするかを論点とした話し合いが特許庁で行われた。現行の特許権は発明者である社員のものとなっているが、特許法の改正を行い「企業のもの」としていく方針だ。
社員の発明による特許権について、企業のものとするか社員個人のものとするかを論点とした話し合いが9月3日、特許庁の「特許制度小委員会」にて開かれた。現行の特許権は発明者である社員のものとなっているが、特許法の改正を行い「企業のもの」としていく方針を固めた。
特許法の見直しは2013年6月に、政府が成長戦略のひとつとして知的財産政策の基本方針を示し、「職務発明制度」の見直しを抜本的に図ることを閣議決定したことから始まる。職務開発制度は、開発者となる企業の社員や法人の役員、国家公務員、地方公務員などの個人に対し、発明のインセンティブとしても機能するよう使用者が対価を適切に保障することを約束している。
日本における特許法は大正期以降、発明者に特許権を認める「発明者主義」を基本的理念としていた。しかし04年に法改正を受けた後は、開発者である社員への対価は企業との「自主的な取り決め」に委ねるとし、発明者主義が薄らぐ内容となっている。対価の算出については全過程を総合的に評価し、「不合理と認められるものであってはならない」としているが、評価基準については不明確であり、金額をめぐる裁判も起こっている。
青色発光ダイオード(LED)の発明者である中村修二氏が、発明時に在籍していた日亜化学工業に正当な対価を求めて訴えを起こした問題は「中村訴訟」として知られている。LEDの技術は約1,000億円の売上を生み出したが、当初企業が発明の対価として中村氏に支払った金額はわずか2万円だった。05年1月11日東京高裁で、企業側が中村氏に8億4,391万円を支払うことで和解が成立。和解金の内訳は、発明の対価が6億857万円で、遅延損害金として2億3,534万円が加わる形となった。
対価をめぐるトラブルをなくすためにも、産業界では特許を会社のものと明確に規定することを求めている。しかし開発者個人の権利が認められないとなると、モチベーションがあがらないばかりか、技術開発に協力する研究者が海外に流れてしまうのではないか。企業優位ばかりでは優秀な人材が日本から離れていくことも懸念され、特許権を全面的に企業のものとする方針には疑問符がつきまとう。(編集担当:久保田雄城)