世界保健機関(WHO)は9月4日、2012年の自殺者数が世界で推計80万人以上にのぼったことを発表した。これは自殺防止に関する初の報告書となり、自殺は個人の問題ではなく、「深刻な公衆衛生上の課題」として社会全体で捉えるべきものと訴えた。WHOは20年までに自殺率を10%引き下げることを目標に据え、各国に対し、カウンセリングを実施するなど自殺を防ぐための取り組みを呼び掛けている。また自殺に使用されることの多い銃器の入手について制限を設けることも必要とし、規制対策を積極的に行っていくことを求めた。
報告書によると、所得が中・低度の国の自殺者が全体の約75.5%を占め、年齢別に見ると70歳以上の高齢者の割合が高い傾向にある。自殺者数が最も多かったのはインドで25万8,075人、次いで中国が12万730人、米国が4万3,361人、ロシアが3万1,997人、日本は2万9,442人、韓国は1万7,908人となり、自殺者が1万人を超えた国は11カ国だった。また人口10万人あたりの自殺者数割合で最も高かったのは南米のガイアナで44.2人、続いて北朝鮮の38.5人、韓国の28.9人となった。日本は18.5人となり世界平均の約1.6倍となっている。
中でも韓国の自殺率は著しく悪化しており、20年前には8.2人だったが、今回の調査では世界第3位の自殺率となってしまった。経済協力開発機構(OECD)による統計でも、加盟34か国中、韓国の自殺率は10年連続で1位となっている。理由として挙げられているのが高齢者層の貧困問題だ。年金制度の整備が不十分で、生活に困窮する高齢者が少なくないという。実に、韓国の65歳以上の自殺率は81.9人とも言われ、少子高齢化が進行していくことが予想される中、国による対策は欠かせない。
日本では自殺対策基本法などが設置され、自殺防止を目標に国を挙げて取り組みが進められてきた。自殺者数は11年まで3万人を越えて推移していたが、徐々に減少し、12年には3万人を切った。14年1月に警察庁が発表した内容によると、13年の自殺者は2万7195人となり、一定の効果が出ているとも見受けられる。しかし依然として15歳~39歳の死因のトップは自殺であり、20~40代の自殺率は高いままだ。深刻な状況であることには変わりなく、福祉や労働環境、教育など包括的に支援策を立ち上げていく必要を感じる。(編集担当:久保田雄城)