4Kテレビ、在京TVキー局も冷ややかな対応。番組制作への意欲すら無い?

2014年06月07日 07:41

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国内家電メーカーが業界浮上の期待の星として販促に熱心な「4Kテレビ」。60型以上のサイズの製品でなければ、高画質は体感できないという事実も……。

 このところ、日本の家電業界で期待の星となっている「4Kテレビ」周辺が賑やかだ。4Kの「K」はキロ=1000を意味しており、横の画素数が約4000(正確には3840)を超えるテレビが4Kテレビと呼ばれる。とにかく細密な画質が自慢のテレビなのだが、果たして誰がこれを購入するのだろうか。少なくとも4Kの高画質を人間の眼で理解するには60型以上、出来れば80型以上の画面が必要だとされる。40型程度の画面の大きさでは体感できないというわけだ。その程度の画面であれば、現状の「2K(フルハイビジョン)」で十分だということなのだ。

 テレビを解像度だけで評価するなら、商品として「4Kテレビ」は悪くない。しかしながら、マーケティングの常識で考察するなら、どのようなジャンルの商品でも、良い商品だからといって売れるとは限らない。売れるのは、品質や性能という基準よりも、消費者が欲しい思う商品かどうかなのだ。そして、当然だが、いくら技術力を誇示できる新製品を開発・発売しても、売れなくては無意味。その企業の存続さえ危うい。

 技術力を重視し、そこに溺れる企業が存在する。そして、この手の失敗を繰り返している。ユーザー・オリエンテッドなマーケティング戦略を無視し、無駄に品質・性能の良い商品を発売、「が、しかし、売れませんでした」「消費者が付いて来られなかった」「発売が早過ぎた」というパターンだ。

 企業に余力があるのならば、これも由としよう。高い技術力というブランドイメージが、企業戦略上で役立つという発想も重要だ。自動車業界で言うなら「メルセデスの新しい技術は、製品化まで時間をかける。言ってみれば、石橋を叩いても(なかなか)渡らない。しかし、その技術開発力は世界で評価」されている。社内で何度も揉まれて、マーケと実験部の評価が一致するまで製品化しないことがその評価を上げているのだ。

 しかし、今、日本の家電メーカーに、そんな余裕があるのだろうか。

 4Kテレビの最大の特徴は高画質だ。が、思うに、この特徴を活かすことができるコンテンツがあるのだろうか。6月2日からスカパー! プレミアムで試験放送がスタートしたとは言え、視聴には「4Kテレビ」、「124/128CSデジタル対応アンテナ」(従来の110度BS共用アンテナでは不可)や「ハイスピードHDMIケーブル」「4Kテレビチューナー」、そして「スカパー!ICカード」が必要で、試聴までのハードルは極めて高い。

 試験放送の内容も貧弱だ。すでに2K(フルハイビジョン)で放送されたドキュメンタリーなどが中心で、4Kならではという番組はない。

 また、テレビキー局の下請けとも言える番組制作会社が気にかけるのは、決算報告で示された各局「上半期番組制作費」減の報である。製作費増であるならば、制作会社の景気も多少ながら明るい見通しとなる。だが、減額となれば、制作会社自体も今後の予算も絞らざるを得ない。結論から言えば、在京の民法キー5局全体の、2014年上半期制作費は2044億円。前年同期が2148億円だった。100億円以上の減額である。

 先日の在京キー局の決算報告を具体的に見ると、TBSが495億8900万円(前年同期518億9300万円)で4.5%減。横ばいがフジテレビで、上半期488億円で前年同期が492億円、4億円の減だ。日本テレビの上半期制作費は484億4200万円で3%減。テレビ朝日の上半期が400億9200万円で4.3%減だ。また、テレビ東京が174億9400万円で4%減である。テレビ局の番組制作費は今後も3~4%とゆるやかな減少傾向をたどる。逓減傾向の“利益”を株主に報告、合わせて経費を削るという予算の組み方が定着し、このままでは、ますます下請け制作会社の経営は厳しくなる。そうなると、4K放送用番組制作機材の導入など、まったく目処が立たない。果たして4K番組は誰が作るのだろう。

 考察を続けると、4Kテレビの先行きは絶望的だ。高画質になることで意味があるコンテンツがない。これは日本だけの問題ではないはずだ。4Kテレビは「過剰品質による失敗」の典型になる可能性を秘めている。さらに、2020年の東京オリンピックまでに、4Kを軽く飛び越える「8Kテレビ」を目指すという。

 最後に、決算発表の席でTBSの石原俊爾社長が語ったひと言、「(4K放送については)視聴者のニーズを見極める必要がある。私どもは非営利事業ではない」と冷ややかな印象を受けたことを付け加える。(編集担当:吉田恒)