小売セクターはマイナスながら業種別騰落率2位と健闘。食品スーパーは「日替わりヒーロー」のように入れ替わりでランキング入り。東京の多摩地区や北関東エリアのエコス<7520>は3~8月期中間期の営業利益見通しを8.25億円から11.17億円に上方修正し一時ストップ高の96円高で年初来高値を更新し値上がり率2位。近畿圏、首都圏のライフコーポレーション<8194>は46円高で値上がり率14位。ABCマート<2670>は3~8月期の既存店売上高が国内も海外も好調で、2月期通期の営業利益見通しを358億円から22%増益の406億円に上方修正し350円高で年初来高値を更新し値上がり率6位。ヤマダ電機<9831>は後場急伸して売買高13位に入り8円高で値上がり率15位だった。丸善CHI<3159>は大引け後のノーベル文学賞の発表前なのにあっけなく19円安。物理学賞の受賞祝賀ムードにあおられただけの典型的なイベントドリブンか。
吉野家HD<9861>は3~8月期決算を発表。「吉野家」も「はなまる」も海外も全ての事業分野で増収、営業増益で、全体の売上高は3%増、営業利益は約2.5倍、純利益は4.4倍で14円高。通期見通しは据え置き。売買代金14位の住友不動産<8830>は9.5円高で逆行高。不動産セクターは業種別騰落率5位。乃村工藝社<9716>は前日、3~8月中間期決算を発表し、受注高は8.3%増、営業利益は10.2%増。2月期通期の営業利益見通しは15.9%の大幅増の50億円で当初予想を3億円上方修正したが市場予測の52億円に届かず59円安。同じような目にあったのが医科・歯科用資材のマニー<7730>で、前日発表の8月期通期の営業利益は29.2%増で従来予想を上振れたが、今期の通期見通しの営業利益が10.1%増の43億円でも市場予測の46億円に届かず420円の大幅安。両銘柄とも業績悪化どころか2ケタ営業増益見込みだが、マーケットの期待値が非常に高いからこうなる。テストで100点満点を期待された秀才が90点を取って先生に怒られるようなもので、秀才もつらいよ。
ファミリーレストランの草分けで「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」を運営するすかいらーく<3197>が東証1部に直接、8年ぶりに再上場した。公開価格1200円に対し9時の取引開始と同時に1200円の初値がつき4月23日の西武HD<9024>以来の「引き分け」。しかし仮条件下限の公開価格を上回ったのは序盤の十数分間だけで、前場は乱高下し後場は徐々に値を下げる展開で終値は1143円と公開価格を4.75%下回った。売買代金15位。西武HDの時は終値は10.6%上昇した。すかいらーくの上場は同じ東証1部で公開株式数がケタ外れに多い大型IPOという点で16日のリクルートHD<6098>上場の「試金石」とみられていたが、黒星こそ避けられたものの一抹の不安を残した。
新興市場は日経ジャスダック平均は1.42%下落、東証マザーズ指数は3.47%下落。その中でFFRI<3692>は一時ストップ高の740円高で6日続伸し特急はなかなか停まらない。エナリス<6079>は大量の蓄電池を遠隔制御して電力需給を調整するサービスを開始という材料があり52円高。アニメ制作プロダクションで「ガンダムの会社」として知られる創通<3711>は、11月30日を基準日に1株を2株に分割すると発表し230円高で年初来高値を更新した。
この日の主役はファミリーマート<8028>。前日に3~8月期決算を発表し、営業総収入は新店効果で5%増でも既存店売上高は1.5%減で、営業利益は16%減。純利益は45%増だがこれは韓国市場撤退の際の株式売却益が寄与した特殊事情。2月期の通期見通しは営業総収入を84億円、営業利益を60億円それぞれ下方修正し一転営業減益見通しに。既存店売上高は2%増から1.2%減に下方修正した。純利益見通しは据え置き。新規出店数で毎年セブンイレブンとツッパリあう出店コスト増を消費増税後の反動減や夏の天候不順に直撃され、小売業統計では好調なはずのコンビニ業態「3強」の一角がもろくも崩れ70円安で年初来安値を更新した。
中山勇社長は記者会見で「消費増税による下振れリスクは織り込んでいたが、想定以上に消費の回復が鈍化している」と言い訳したが、当初計画に固執せず、今年度の出店数を1600店から1300店に下方修正した点はまだ救いがある。「少なければ則ち能く之を逃れ、若かざれば則ち能く之を避く」(孫子「謀攻篇」)で、大将の器は軍勢を引かせた時にわかる。商品戦略を練り直して出直しだ。(編集担当:寺尾淳)