ノーベル平和賞に「憲法9条」? 問われる平和賞の意味

2014年10月11日 19:39

取・ノーベル平和賞に「憲法9条」? 問われる平和賞の意味

今週日本人3人がノーベル物理学賞を受賞したことで、街はノーベル賞の話題で持ち切りになっている。ノーベル賞のうち1つの部門で賞を得ただけでも大変素晴らしいことだが、今年もう1部門日本人が受賞できるかもしれないといわれている賞がある。

 今週日本人3人がノーベル物理学賞を受賞したことで、街はノーベル賞の話題で持ち切りになっている。6分野しかないノーベル賞のうち1つの部門で賞を得ただけでも大変素晴らしいことだが、今年もう1部門日本人が受賞できるかもしれないといわれている賞があることはご存知だろうか。受賞レースに名前が挙がっている日本人、それは「日本国民」全員だ。

 10月3日、毎年ノーベル賞の受賞予測を発表しているノルウェーのオスロ国際平和研究所が、10月10日に発表されるノーベル平和賞の受賞予測に「憲法9条を保持する日本国民」を最有力候補に挙げた。受賞レースのトップに躍り出たことで受賞への期待が高まっているが、その他の候補にはNSA(国家安全保障局)の極秘情報収集活動を暴露したエドワード・スノーデン氏やパキスタンの女性人権活動家マララ・ユスフザイ氏などが挙がっており、受賞できるかは疑わしい。

 オスロ国際平和研究所の予想の的中率が低いのは周知の事実で、平和賞が的中したのは2007年に『不都合な真実』などで温暖化対策を訴えたことで受賞したアル・ゴア元アメリカ副大統領の例だけだという。

 今回「憲法9条」が受賞するのはなかなか難しいかもしれないが、「想定外」の受賞例があるのは事実だ。というよりも、ここ最近平和賞の部門では議論を呼ぶ選定が続いている。昨年、受賞したのは「化学兵器禁止機関(CPCW)」。シリアで化学兵器が使用された時期の受賞であり同機関の活動を政治的に後押しする狙いがあったが、ある意味活動が十分でないことを露呈した同機関の受賞には議論が起こった。その前年12年の受賞は「欧州連合」。これもまた「激励」の意味だと受け取られたが、ユーロ危機の中での受賞に「政治的である」という批判が強く聞かれた。ノルウェー国会が任命した委員が選定している以上「政治的」という指摘は否定できないだろうが、社会が多様化する中で「平和」という概念の取り扱いが難しくなっていることも事実だ。

 ノーベルは平和賞について「国家間の友愛関係の促進、常備軍の廃止・縮小、平和のための会議・促進に最も貢献した人物」という定義を遺言で残している。「激励」や「後押し」のための受賞が間違っているとは言わないが、平和賞はより厳しい状況下にある人々のためにあるべきではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)