厚生労働省が発表した8月の有効求人倍率は、全体で1.10倍、正社員に限っても0.68倍となり、改善傾向が鮮明になった。サービス業などでは、人手不足感も強まる。企業にとっては、より優秀な人材を確保することが難しい状況となっている。貴重な人材の流出を防ぐためには、何が必要なのか。
在籍企業の職場環境に対する口コミサイトを手がける「Vorkers」が、約6万件の社員・元社員のデータを分析したところ、「残業時間が長い」「社員から『法令順守意識が低い』と思われている」などの要因が、離職率を高めていることが分かった。
同サイトでは、現職者(2万5840人)と退職者(3万1159人)の差異などを集計、分析。まず、「月平均残業時間」を見ると、現職者が45時間に対し、退職者は51時間と、6時間の差が生じていた。さらに、残業時間が月間「150時間以上」では、現職者36.1%に対して、退職者は63.8%、「100~150時間未満」では、現職者39.6%、退職者60.3%と、残業時間が長くなるほど退職者の割合が高くなっている。ワークライフバランスや、効率のよい働き方が広まりつつある昨今、残業時間が長いことは、社員の離職率を高めてしまうようだ。
一方、「有休取得率」については、現職者42%、退職者41%と、ほとんど差はなかった。同社が分析した「退職理由」についてのクチコミの中にも、「有休がとれない」ことだけを理由としたものはゼロに近かったといい、有休取得率は、退職理由としてそれほど大きなものではないようだ。有休が取れるかどうかよりも、日々の残業時間の方が重視されているのだろう。
また、社員が在籍企業の「働きがい」を8項目で評価したデータを集計し、現職者と退職者の平均値を比べたところ、最も大きな差が出たのは「法令順守意識」だった。社員から「法令順守意識が低い」と思われている企業は、離職率が高くなっている可能性がある。8項目のうち、「法令遵守意識」以外の項目(「社員の士気」「待遇面の満足度」「風通しの良さ」など)は、現職者と退職者でほぼ差がなかった。(編集担当:北条かや)