天気予報が物流を変える 食品ロス削減・省エネ物流プロジェクトがスタート

2014年10月18日 17:28

 「天気予報は当たらない」。天気予報は昔からよく揶揄されてきた。それを受けてかどうかはわからないが、一般財団法人日本気象協会が、天気予報で物流を変える取組として「需要予測の精度向上による食品ロス削減及び省エネ物流プロジェクト」を実施すると発表した。これは、同協会が気象情報を核として高度な需要予測を行ったうえで、食品メーカー(製)、卸売事業者(配)、小売事業者(販)と需要予測の情報を共有し、食品ロスの削減と、返品・返送、回収、廃棄、リサイクルなどで不要に発生している二酸化炭素の5%削減を目指す試み。製・配・販を気象情報でつなぎ、協業してムダを削減する事業は国内で初めての試みだという。 なお、この事業は経済産業省の「平成26年度次世代物流システム構築事業費補助金」において採択されている。

 食品の物流では一般的に、製・配・販の各社がそれぞれ独自に、気象情報や各社が持つPOS(販売時点情報管理)データなどに基づいて需要予測を行っている。しかし、製・配・販各社が需要予測で用いるデータは十分に共有されているとは言えない。そのため、各流通段階で生産量や注文量にミスマッチが起こり、廃棄や返品ロスなどのムダが生じる一因となっているという。

 そこで、今回のプロジェクトでは、日本気象協会が気象情報に加えてPOSデータなどのビッグデータも解析し、高度な需要予測を行ったうえで製・配・販の各社に提供。気象情報には、「アンサンブル(集団)予測」を用いた長期予測等も活用し、需要予測の精度をさらに向上させる。これにより、廃棄や返品等を減少させ、不要に発生している二酸化炭素を5%削減することを予定しているという。

 事業初年度の2014年度は、対象地域を関東地方、対象商品を「豆腐」「麺つゆ・鍋つゆ」の2品目に絞る。「豆腐」は気象状況によって売り上げ変化が大きな日配品(豆腐、牛乳、乳製品など、冷蔵を要し、あまり日持ちのしない食品)の代表として、「麺つゆ・鍋つゆ」は、賞味期限は長いものの特定の季節に需要が集中する季節商品の代表として選択した。豆腐は相模屋食料株式会社、麺つゆ・鍋つゆは株式会社Mizkan(本社:愛知県半田市)が食品メーカーとして事業に参加する。

 また、次年度以降は、対象商品を食品に限らず気象条件によって廃棄・返品ロスが生じている商品すべてに広げ、対象地域も全世界に拡大していく予定。さらに、各流通段階で適正な在庫を確保することにより商品の安定供給が可能になることで、最終消費者もメリットを得られることを目指す方針だ。(編集担当:慶尾六郎)