気象情報の共有で食品ロスを減らせ プロジェクトが始動

2014年10月12日 18:56

 日本気象協会は、天気予報で物流を変える取り組みとして「需要予測の精度向上による食品ロス削減及び省エネ物流プロジェクト」を実施する。製造・配送・販売業者を気象情報でつなぎ、協業してムダを削減する事業は国内で初めての試みだ。経済産業省の「次世代物流システム構築事業費補助金」事業として実施する。

 プロジェクトでは、同協会が気象情報を核として高度な需要予測を行ったうえで、食品メーカー(製)、卸売事業者(配)、小売事業者(販)と需要予測の情報を共有。食品ロスの削減と、返品・返送、回収、廃棄、リサイクルなどで不要に発生している二酸化炭素の5%削減を目指す試みだ。

 食品の物流では一般的に、製・配・販の各社がそれぞれ独自に、気象情報や各社が持つPOS(販売時点情報管理)データなどに基づいて需要予測を行っている。しかし、製・配・販各社が需要予測で用いるデータは十分に共有されているとはいえない。そのため、各流通段階で生産量や注文量にミスマッチが起こり、廃棄や返品ロスなどのムダが生じる一因となっている。

 そこでプロジェクトでは、同協会が気象情報に加えてPOSデータなどのビッグデータも解析し、高度な需要予測を行ったうえで製・配・販の各社に提供。気象情報に、長期予測なども活用し、需要予測の精度をさらに向上させる。これによって廃棄や返品を減少させ、不要に発生している二酸化炭素の削減を目指す。

 初年度の2014年度は、対象地域を関東地方、対象商品を「豆腐」「麺つゆ・鍋つゆ」の2品目に絞る。「豆腐」は気象状況によって売り上げ変化が大きな日配品(豆腐、牛乳、乳製品など、冷蔵を要し、あまり日持ちのしない食品)の代表として、「麺つゆ・鍋つゆ」は、賞味期限は長いものの特定の季節に需要が集中する季節商品の代表として選択された。

 15年度以降は、対象商品を食品に限らず気象条件によって廃棄・返品ロスが生じている商品すべてに広げ、対象地域も全世界に拡大していく予定だ。また、各流通段階で適正な在庫を確保することにより商品の安定供給が可能になることで、最終消費者もメリットを得られることを目指す。

 食料の大量輸入、大量廃棄をくり返す日本。食料の廃棄率では、世界一の消費国であるアメリカをも上回るとの試算もある。情報共有によってこうした食品ロスが削減できれば製配販、そして消費者にとっても大きなメリットだ。もっとも、日本の食品廃棄の半分以上は、家庭からの廃棄であることも見過ごすことはできないのだが。(編集担当:横井楓)