世界で廃棄される食料品は年間13億トンにのぼり、生産量の3分の1にも及んでいる。日本でも年間800万トンが廃棄されており、国は対策を講じている。食品業界の常識である納品期限を見直し、フードロスの大幅な削減に向けて、ワーキングチームが実証実験の真っ最中だ。
フードロスとは、食べ残しや賞味期限切れなどで、捨てられる食品のことを言う。2011年に国際連合食料農業機関が発表した「世界の食料ロスと食料廃棄」に関する調査報告書によると、フードロスの量は、世界の食料生産量の3分の1にもおよんでいるという。年間にして13億トンもの食料が廃棄されているというのが現状だ。その一方で発展途上国では飢餓による死者があとを絶たず、地球規模で進む人口増問題でも食料不足が懸念されている。フードロスは経済的な損失にも繋がり、水や電気、ガスなどのエネルギー資源の無駄使いにもなっている。
日本でのフードロスは年間500~800万トンにのぼる。レストランや食品関連事業による廃棄量は300~400万トン、家庭から破棄される食品は200~400万トンだ。農林水産省は食品事業者環境対策推進支援事業の一環として、食品業界での取り組みを後押ししている。日本有機資源協会と 流通経済研究所は、12年に「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」を発足させ、業界全体の協力体制を構築した。参加企業は、食品製造業の味の素<2802>、江崎グリコ<2206>、キッコーマン<2801>、日清食品<2897>、ハウス食品<2810>などで、卸売業では三菱食品<7451>や、お菓子の山星屋など、また小売業ではイオンリテール、イトーヨーカ堂、東急ストア、ファミリーマート<8028>が参加している。
具体的な活動は、食品取引上で条件として設定されている納品期限の見直しだ。ワーキングチームでは、加工食品の返品や廃棄量を減らすために、その基準を見直す実証実験を行っている。
現行では、商品の汚損や破損、店舗での販売期限切れなどを理由に、商品が返品され、廃棄されている。また、賞味期限の3分の1を過ぎた商品は、納品期限切れと判断され、未出荷のまま廃棄されてしまうということも起こっている。対応策としては納品期限を、賞味期限の3分の1から、2分の1に緩和することが挙げられている。実証実験によって市場への影響がクリアされれば、食品業界全体の出荷体制が再編され、大幅なフードロス削減が実現するかもしれない。(編集担当:久保田雄城)