4日はオーストラリア準備銀行理事会が開かれ、アメリカの中間選挙の投票日。5日はタイ、ポーランドの中央銀行で政策金利が発表される。5~6日はイングランド銀行(BOE)の金融政策委員会が開かれ、6日に政策金利が発表される。6日はマレーシアの中央銀行で政策金利が発表される。フランクフルトでは欧州中央銀行(ECB)の定例理事会が開かれ、終了後に政策発表とドラギ総裁の記者会見がある。ブリュッセルでは6日にユーロ圏財務相会合、7日にEU財務相理事会が開かれる。
アメリカ主要企業の7~9月期決算は終盤。3日はAIG、スプリント、HSBC、4日はエスティローダー、ADM、プライスライン、アリババ、トリップアドバイザー、5日はクアルコム。テスラ・モーターズ、6日はウォルト・ディズニー、エヌビディアが発表する予定。
10月末、首都圏の駅ではプラットホームから人を突き落とす殺人未遂事件が続発した。31日朝に発表された「労働力調査」では失業率も有効求人倍率も悪化し、その理由について日経新聞は「企業が正社員の採用を進めた結果、労働者派遣業などで求人が減り、倍率の低下につながった」と解説していた。そこに「正社員になれれば天国、なれなければ地獄」という社会の階層分化と、そのひずみが駅のプラットホームという場所で噴出した「ルサンチマン犯罪」の暗黒を垣間見てしまい、ルサンチマンの概念を定義したキルケゴールや、それを多用したニーチェがもし今の日本の現状を見たならどう言うだろうかと、アンニュイな気分にさせられた。
それが、10月31日午後1時44分を期して突然、「コペルニクス的転回」のごとき出来事が起きた。直後の「バイイング・クライマックス」の東京市場は、あまりにも非日常的にして非理性的。ニーチェが言う「祝祭的空間」が一気に出現したかのような様相を呈した。波状的に上昇した10月31日後場のお祭り騒ぎの中、9月25日の年初来高値からの下落分の「半値戻し」を10月29日に果たしたばかりの日経平均は、わずか2日後に年初来高値を更新して「全値戻し」を達成。証券業界伝統の根拠不明確なポジティブシンキングワード「半値戻しは全値戻し」に実例のお墨付きをプレゼントした。
このように前週末に降ってわいた「黒田ハロウィン緩和」によって、マーケットの気分はやけに高揚している。「人間というものは、気分が大事です」(松下幸之助)と言うが、その「気分」はある意味恐ろしい。エボラ出血熱の拡大やイスラム過激派のテロの脅威も、ヨーロッパのデフレ懸念も、消費増税後の反動減からなかなか立ち直れない国内の景気も、消費税の10%への再引き上げも、2閣僚が辞任した安倍内閣のほころびも、そしてルサンチマンの暗黒も、気分の上では全てまぶしい光の中に塗り込められてしまった。
この気分が三連休で保存されようと、興奮がある程度クールダウンしようと、数々のリスクは今週も依然として健在である。ただ、一時的に見えなくなっていただけ。しかも、日経平均はここまで上昇してしまったら、リスクがひとたび顕在化すればもろくも大幅下落を喫してしまう可能性が大きくなっていることを、覚悟しなければならない。
それを前提に10月31日時点のテクニカルポジションを確認すると、終値の16413.76円は5日移動平均の15668円も、75日移動平均の15538円も、25日移動平均線の15495円も、200日移動平均線の15075円も、全てはるか見下ろす位置にある。日足一目均衡表の「雲」は15563~15989円で最近になく厚かったが、一気に突き抜けて434円も上に出ている。ボリンジャーバンドは25日線+1σの15991円を抜けて+2σの16487円との間にあるが、+2σまであと74円で1日で手が届く範囲にある。25日移動平均線乖離率は+5.9%で+5%以上の「買われすぎ」ゾーンにあり、ストキャスティクスの9日Fastは94.59で100に接近しているが、25日騰落レシオは81.30で「買われすぎ」に踏み込む100までは余裕がある。
そんな状況で、どこまで上値を追えるのだろうか? ここで考慮したいのが為替と需給である。31日のNY外国為替市場でドル円は112円台、ユーロ円は140円台に乗せた。ドル円はほぼ7年ぶりの円安水準で、7年前の2007年の日経平均は10月は17488円、11月は16887円まで上昇している。31日のNYダウは史上最高値を更新しており、為替と海外市場の要素からみれば今週の17000円タッチは十分ありうるだろう。テクニカル的にはボリンジャーバンドの25日線+3σのラインが16984円にあり、統計学的にはそれを超える確率は0.3%しかなく、そこが限界か?
一方、需給面でも追い風が吹いている。東証が発表する「投資主体別売買動向」を見ると、10月は第3週(14~17日)までは信託銀行、投資信託、個人が大幅買い越しで、日銀のETF買い入れ、GPIFなど年金資産、個人投資家の押し目買いの「三銃士」が海外投資家の先物主導の大量売り越しに対決を挑むという構図になっていた。それが第4週(20~24日)になると、4週連続で買い越していた個人が売り越しに転じて三銃士から脱落したが、海外投資家の大量売り越しがやんで買い越しに転じた。4076億円の売り越しから257億円の買い越しに変わった程度ではまだ「需給の味方」とは言えないが、日銀とGPIFという「二銃士」が10月31日に揃ってパワーアップした点が心強い。日銀はETF買い入れの3倍増を発表し、日経平均採用銘柄と重なる銘柄も多いJPX日経400に連動するタイプのETFも対象に加えた。GPIFのほうは国内株式の運用比率を25%まで高めると発表している。今後は日銀とGPIFが需給を力強く支えてくれることだろう。需給面でも、日経平均17000円タッチは上値メドとして高すぎるとは言えない。
とはいえ、もろもろのリスクは健在で「買われすぎ」のシグナルもいくつか点灯しているので、下値のレンジも十分にみておく必要がある。では、どこで下げ止まるか? 有力そうなのが日足一目均衡表の「雲」でのバウンドで、今週はその上限が16000円付近。そのあたりの水準なら25日移動平均線乖離率+5%の16270円を下回り「買われすぎ」ではなくなり、ボリンジャーバンドの25日線+1σも10月31日時点で15991円にある。下げても16000円までがメドになるだろう。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは16000~17000円とみる。1000円幅とは大きいが、前週に一気に1122円も上昇したのだからしかたない。「山高ければ谷深し」で、上昇幅も大きければ下落幅も大きい、ボラティリティ大の週になりそうだ。(編集担当:寺尾淳)