【日経平均】解散風吹き343円高17100円台乗せ年初来高値

2014年11月11日 20:15

 プラント大手の日揮<1963>は売上高28%増、営業利益微増、純利益は2%増の254億円で全て市場予測を上回り、通期見通しに対する進捗率は61%と好調で145円高。通期見通しは据え置き。千代田化工建設<6366>は売上高4%増ながら販管費などコスト30億円増が響き営業利益11%減、純利益20%減。通期見通しは据え置きだが、LNGプラントなどの受注の伸びと、完成工事総利益率が0.5ポイント改善して10.3%になったのを評価され83円高で値上がり率9位。高砂熱学工業<1969>は、経常損益が前期の5.8億円の赤字から10.4億円の黒字に転換した好決算に160万株、20億円上限の自社株買いも発表し35円高。原発関連プラント工事の太平電業<1968>は営業利益が2.8倍で、通期営業利益を27.5億円から33.8億円に上方修正すると93円高で年初来高値を更新し値上がり率3位に入った。

 住友金属鉱山<5713>は通期の営業利益見通しを930億円から1160億円に上方修正し、中間配当、期末配当予想を24円に増額修正し75円高。車載向けや電子部品向けの材料が好調で、海外での銅製錬の手数料が日本円換算で増えるなど円安効果も出ている。低位株トレードで売買高ランキング常連のユニチカ<3103>が前場に4~9月中間期決算を発表。営業利益は0.1%増だが最終損益は前期の16.4億円の黒字から216億円の赤字に大幅に悪化した。それでも値動きなし。この銘柄の株価は業績とは異次元の空間を飛行している。売買高は2位だった。

 10月はエボラ出血熱関連で買われた不二ラテックス<5199>は通期の利益予想を下方修正し9円安。同じく富士フイルムHD<4901>は後場に2014~2016年度の中期経営計画を発表すると急騰し売買代金11位に入り118.5円高で年初来高値を更新した。2016年度の売上高2兆6300億円、営業利益2200億円という目標もさることながら、2016年度までに2000億円強を配当と自社株買いで株主還元しROEを7%に引き上げる施策がマーケットの琴線に触れた模様。

 食料品セクターは業種別騰落率第6位と健闘。円安は小麦や大豆などの輸入原料価格が高くなるので本来は下落要因だが、価格に転嫁して製品を値上げするニュースが採算改善を連想させ株価上昇。味の素<2802>は2月からの冷凍食品の値上げを発表し71.5円高。江崎グリコ<2206>は3月からのアイスクリームの値上げを発表して260円高で値上がり率12位。業績の良いキッコーマン<2801>は70円高、ヤクルト本社<2267>はみずほ証券が目標株価を引き上げ340円高、伊藤ハム<2284>は11円高で、ともに年初来高値を更新していた。

 ドラッグストアのサンドラッグ<9989>は4~9月中間期の営業利益が20%減で445円安で値下がり率3位。フランス料理を出す話まで飛び出した王将フードサービス<9936>はいちよし経研がフェアバリューを引き上げ30円高。京成<9009>は野村證券が目標株価を引き上げ36円高だった。

 ゲーム関連のKLab<3656>が1~9月中間期の営業利益見通しを12.96億円から18.91億円に上方修正したが69円安で値下がり率14位。次回作の発売延期はかなり心証が悪い模様。解散風が強まり選挙関連は後場急騰。昨年の参議院選挙で注目された「ニコニコ動画」のカドカワドワンゴ<9468>は85円高。清き一票の計数機のムサシ<7521>は160円高で年初来高値更新。ウグイス嬢の声の拡声器のTOA<6809>は44円高。政党や候補者のPRで実績があるフラップジャパン<2449>は一時ストップ高の265円高。ネット世論調査のインテージHD<4326>は34円高で年初来高値を更新した。

 新興市場は日経ジャスダック平均は0.38%、東証マザーズ指数は0.57%上昇。シュッピン<3179>はカメラ事業が好調で、営業利益13.5%増の4~9月中間期決算と1対2の株式分割実施を発表し150円高で年初来高値を更新した。

 この日の主役はゼンショーHD<7550>。前日に通期の業績見通しの下方修正、営業損益赤字転落、上場以来初の無配を発表し48円安で値下がり率13位。主力の牛丼の「すき家」では深夜1人勤務の取りやめと人手不足で深夜営業を休止する店舗が続出し既存店売上高が減少。オーストラリアやアメリカ産の牛肉の輸入価格が円安で高騰し追い討ちをかけた。それを値上げに転嫁できないのが「客商売」のつらいところ。通期業績見通しの売上高は5250億円を5092億円に下方修正、営業損益は80億円の黒字を17億円の赤字に下方修正し、最終損益の赤字幅を13億円から75億円に下方修正。店舗リストラに伴う減損損失や除却損など29億円を特別損失に計上する。前期16円だった年間配当は無配とし、半年間の役員報酬の減額も決めている。

 「失われた20年」の間、ゼンショーHDのようなローコストオペレーションで徹底的に低価格を追求し大きく成長したデフレ型ビジネスは、アベノミクスのもと、円安による原材料高と人手不足で窮地に追い込まれている。クレディスイスは日本では今後5年で100万ドル(約1億1400万円)以上の純資産を持つ富裕層が1.7倍に増える予想を出したが、厚生労働省が発表する生活保護の受給世帯数は4ヵ月連続で過去最多を更新している。デフレ型ビジネスのニーズが絶えることはなく、景気の変動で再び日の目を見る時期が来るかもしれない。しかし現状は、戦線を縮小して「選択と集中」を進めなければ収益を得られず、企業の存続も危うくなっている。(編集担当:寺尾淳)