重要案件目白押し次期通常国会行方占う重要選挙

2014年11月15日 11:06

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衆院解散、総選挙が現実味を帯びている。

 衆院解散、総選挙が現実味を帯びている。大義なくとも、この選挙に自民が勝てば来年の通常国会は安倍政権と巨大与党の、2年間の横暴とも批判された政策も、集団的自衛権の行使容認にむけた基本的方針の閣議決定も、九州電力川内原発に見られた30キロ圏内すべての自治体の同意を取らないまま、手続き上、原発の位置する自治体市町村首長や自治体知事の同意で地元同意は得られたとして進める原発再稼働促進策も、内閣改造で露呈された相次ぐ閣僚の政治とカネの問題も、さらに労働界を中心に野党から強い反対を受けている労働者派遣法改正案も、すべて強気で臨めることになろう。

 安倍晋三総理特有の論法で「さきの選挙で国民の支持を得ている」と。先例がある。集団的自衛権行使容認をめぐる閣議決定を受けての今年7月14日の衆院予算委員会、外交・安全保障政策集中審議で、安倍総理はさきの衆参選挙で解釈変更の支持を国民から得て勝利しているとし、解釈変更の是非について問う総選挙は「現段階で考えていない」と答弁した。

 この時、生活の党の村上史好議員が「解釈変更の閣議決定は、安全保障の大転換にあたるが、この件について国民の信を問う考えはないか」と質した。その答えが「私は自民党の総裁選挙に出た時から、解釈変更を訴えてきたし、衆参選挙の自民党のJファイルにも書き込んであり、そのうえで、私たちは衆参選挙で勝利を得て、政権を維持している」と答え、「現段階で解散を考えているわけではない」と答えた。

 つまり、この時、解釈変更を訴えて総裁になり、党の公約にも書き込んでいたのだから、そのうえで選挙に勝っているので国民からこの点についても支持を得ており、集団的自衛権の行使を争点に国民に改めて審判を仰ぐ必要はないとの考えを述べた。

 この論法だと、年内に実施されるだろう総選挙で自民が勝利すれば、公約のすべては国民の審判を受け、支持された政策となることになる。

 論理としてはそうなのかもしれないが、すべての政策を支持し、あるいは投票者が自民党のJファイルまでを確認し投票行動をとっているかどうかはわからないし、すべての政策を白紙委任しているわけでもないだろう。

 まして、憲法にかかわる重要案件を解釈論で片づけてよいはずもない。この案件は今後の安保法制の整備の中で常に憲法条項と照らしチェックし、国会で議論されていかなければならないことだ。

 巨大与党(自公連立、共闘態勢)に挑む野党各党は、この選挙の結果の重みを認識し、安保法制などを含む来年の通常国会の論戦、自らの政策実現を左右する決戦ととらえることが必要だろう。

 小選挙区で、この短期決戦の中でどれだけの候補を擁立できるのか。野党共闘がどこまで実現するのか。安倍政権が2年前の発足当初の姿勢(これまでと違う自民党政権)から、旧来の自民党の体質を露呈している中で、批判材料は山ほどあるが、小選挙区という1議席奪取の壁は野党共闘ができなければまずできない。公明党が壁の高さをさらに高くしている。

 維新の党の片山虎之助国会議員団政調会長は「与党が強いかというとそんなにでもないと思うが、野党がまとまっているかというと、そんなにも」と強気に出られない現実をうかがわせる。維新の党としての状況でも「党として公募を始めたばかりなので、どれだけいい候補を集められるか。甘くない戦いになると思う」と本音を隠さなかった。

 民主党の枝野幸男幹事長も「小選挙区の半分で候補擁立を」目指すが、逆に言えば半分の小選挙区には候補を擁立し、有権者に選ぶ権利を提供することもできない基盤の弱さを示している。消費税をめぐり、2年前に小沢一郎衆院議員とともに民主党を離党した議員らの小選挙区。この2年の間に、この選挙区に民主党候補擁立の種を蒔くことができたのか、裾野拡張の成果が浮き彫りになるだろう。選挙結果次第では海江田万里代表の責任問題になりそう。いつまでも「党再建途上」とは言っておられないだろう。

 民主党の海江田万里代表とみんなの党の浅尾慶一郎代表が14日夕に会談し、候補者調整を急ぐことになった。枝野幹事長は「自民・公明、共産党以外の候補者が立っていない空白区を何らかの形で埋めていくことが国民に対しても必要」ということだとした。短期でどこまで実効をあげられるのか注視したい。

 また、前回の参議院選挙で躍進し、参議院で非改選の議員を含め11議席で議案提案権と党首討論への参加権を得た共産党が、この衆院選でも議席を伸ばせるのか、横ばいか、減らすのか。情報収集能力を活かし、与党のチェック機能を国会の場で強化できるのか。

 安倍改造内閣の右傾する閣僚顔ぶれからは憲法、安保、労働法制、社会福祉、あわせて京大構内に無断で捜査員が潜り込むという懸念すべき案件も出ている。京都府警警備部は報道によると「適切な対応と認識している」とコメントしたそうだが、大学入構の説明をしたうえで学内に入るべきだろう。学問の自由、思想信条の自由に照らし、無許可で潜り込む行為は社会的危機が明白に迫った緊急を要する案件でない限り控えるべき行為とはいえないか。日常的に潜り込みが行われるとすれば大学構内は自由闊達な議論さえ抑え込まれる危機にさらされよう。今回のケースはどうであったのか、次期国会で議論すべきことでもあろう。

 短期に目をおいても、国民にとって重要案件が目白押しになるだろう次期通常国会の法案審議、与野党論戦の行方に大きな影響をもたらす選挙になる。(編集担当:森高龍二)