アイスや冷凍食品続々値上げ 原材料高騰の背景にある世界を考える

2014年11月16日 20:16

画像・マイバッグ利用でレジ袋辞退率約7割 しかしレジ袋削減は本当にエコか?

2013年を境に、新興国の経済成長を受け生乳の需要は世界的に増加した。日本国内ではそれを受け、今年4月にチーズが各社一斉に値上げ、来年春には同じく乳製品のアイスクリームの値上げが行われる。円安だけでなく、世界的な需要と供給のバランスも大きく関係している。

 原材料高騰や急激な円安を理由とした商品の値上げ発表が相次いでいる。味の素<2802>は、来年2月からギョーザやから揚げといった主力冷凍食品60品目を3~10%値上げすることを発表した。味の素としては24年振りとなる大幅値上げだ。

 また、乳製品原材料の価格高騰により、アイスクリームも値上げ対象となっている。江崎グリコ<2206>は、来年3月から「ジャイアントコーン」、「パピコ」などを希望小売価格120円(税抜)から130円(税抜)に値上げすることを発表。値上げは35品目に渡り、8~11%値段が上昇する計算だ。他にはロッテアイスも主力商品「爽」などを筆頭に34品目を来年3月から8~10%値上げ、森永製菓<2201>も同じく来年3月からアイス7品目の10~30円値上げを発表した。消費者としては悲鳴を上げたいような現状だ。

 他にも消費税8%増以来、増税便乗の値上げや、これまで税込表示だった商品を税抜表示で安く見せる手法なども目立っている。「お値段すえおきです!」とうたった商品も、よく見ると内容量が減っているような場合もあり、ほとんどの人が買い物ひとつにも以前より注意深くなっているだろう。

 冒頭で述べたように、原因は原材料の高騰、そして急激な円安によるコストアップが挙げられる。円安は日銀の金融緩和継続の影響であり、消費者が「それでは景気はよくならず生活が苦しくなるだけ」と文句を言うのも頷ける。しかし、原材料高騰については、立ち止まってその背景にあるものも考えてほしい。

 原材料、中でも乳製品の不足・高騰は世界的なものになっている。その大きな理由は、新興国が発展したことで、今まで貧しくて乳製品を口にできなかった人々にも行き渡るようになった結果、需要に供給が追い付かず価格が上昇していることにある。栄養価の高い乳製品を、世界の多くの人々が手に入れられるようになったことは素晴らしいことだろう。しかし、その結果日本をはじめとした先進国の乳製品価格は上がっているのだ。

 値上げは誰だって嫌だし、理不尽に感じるだろう。しかし、そのこと一つとってみても、世界中の人が先進国のような水準で暮らすことは無理だということが透けて見える。裏返せば、いまだに日本は飽食の中にいるとも言えるだろう。

 アイスを値上げせざるを得ないのは、これまで通り国内に供給しようとするからだ。もちろん企業利益の問題などがあり、一概に正しい・正しくないとは言えないが、365日24時間、どこのコンビニに行ってもアイスが冷凍室にしっかり詰め込まれている国は、世界中にどれだけあるだろう? 「成長」や「豊かさ」は、どこかで知らない何かを犠牲にしている可能性もある。

 本当に必要なものだけを買うこと――。それは苦しい家計を助けるためだけではなく、その背景にある世界のためにも、より消費者が意識しないといけないことかもしれない。(編集担当:久保田雄城)