【日経平均】GDPショックが修復され7割戻しの370円高

2014年11月18日 20:16

 週明け17日のNYダウは14日終値をはさんでもみ合った末に13ドル高と反発したがNASDAQは6日ぶりに17ポイント反落した。東京市場の「GDPショック」の影響は地球を周回するほどではなく、ドラギECB総裁が追加緩和に言及しヨーロッパ市場は堅調、アメリカの年末商戦期待も底堅い。「マージャー・マンデー」でM&Aの話題連発。エネルギー関連ではハリバートンがベーカー・ヒューズ買収を発表し10.6%下落、あのハワード・ヒューズの父親が創業したベーカー・ヒューズは8.9%上昇。医薬品ではアクタビスがアラガン買収を発表し1.7%上昇、アラガンは5.3%上昇。18日朝方の為替レートはドル円が116円台後半、ユーロ円が145円台前半で、為替市場でもGDPショックが修復されていた。

 GDPについては麻生財務大臣を先頭に「在庫調整で下振れしただけ」とリセッション(景気後退)懸念を払拭しようと意図する言い訳がしきりに語られたが、海外メディアは「日本の景気後退」の見出しが並んだ。甘利明経済財政・再生大臣は「経済対策が必要になる可能性が高い」と述べ、補正予算は公共投資より消費押し上げに重点が置かれ2~3兆円というコンパクトな数字が新聞紙上に出た。前日夕方に帰国し「デフレ脱却のチャンスを手放すわけにはいかない。消費税は冷静に分析し判断する」と発言した安倍首相は首相官邸で経済財政諮問会議を開いた後、午後8時の記者会見で「消費増税先送り、解散・総選挙」を発表するスケジュール。その前に消費税率10%引き上げをめぐる「有識者による点検会合」最終回があるが、見事に形骸化され〃有識者〃の人選への疑いだけが残った。

 CME先物清算値は17195円。日経平均は215.04円高の17188.84円と前日の下げ幅を4割戻しして17100円台を回復して始まる。TOPIXもプラスで1380台乗せ。開始直後に17200円をあっさり突破した後、序盤は順調な右肩上がりで午前9時35分に17300円にもタッチする。10時30分に厚生労働省から10月の「毎月勤労統計調査」が発表され、1人当たり現金給与総額は0.7%増の26万6328円で7ヵ月連続増加。所定内給与は0.4%増の24万2092円で4ヵ月連続増加。上海市場はマイナス、香港市場はプラスで始まる。10時台は何度か17300円にタッチするが、11時台は17200円台前半まで水準を下げ、前引けは17258円だった。

 後場は17300円に接近して再開する。1時台までは17200円台後半で小動きするが、2時頃から17300円を突破して2時37分には17356円の高値をつける。TOPIXも1390台に安定的に乗せた。為替のドル円も116円台後半で安定的に推移する。終盤も波風立つことなく17300円台を保ち大引け。買い安心感をもたらしたのは「過去10回の解散から総選挙投開票日までの騰落は9勝1敗」という解散アノマリーに加え、前日の「日銀砲」。今年2番目の大幅安でもマイナスならいつも通りに380億円のETF買い入れを実施した。三方ヶ原の合戦のようなもので、多勢に無勢でも律儀に撃って売り勢力に立ち向かえば、信長が家康を信頼したように、投資家は日銀を信頼してくれる。終値は370.26円高の17344.06円と反発し、前日下落分の約7割戻しで終えた。日中値幅は170円。TOPIXは+28.75の1394.88で前日下落分を約84%も戻していた。売買高は25億株、売買代金は2兆5331億円だった。

 値上がり銘柄は1675で全体の91%を占めた。値下がり銘柄は121。全セクターがプラスで、上位は水産・農林、繊維、その他製品、機械、化学工業、陸運など。下位は石油・石炭、不動産、海運、鉄鋼、卸売、証券など。

 日経平均225種は値上がり217銘柄、値下がり7銘柄。プラス寄与度1位はファーストリテイリング<9983>で+36円、2位はKDDI<9433>で+20円。マイナス寄与度1位は大日本住友製薬<4506>で-0.55円、2位は荏原<6361>で-0.39円だった。

 シティGがシティバンク銀行の個人向け事業を三井住友銀行に売却する検討に入ったと報じられた三井住友FG<8316>は59円高。買収額は300~400億円で、約82万人の個人顧客、店舗と従業員を全て引き継ぎSMBC信託銀行と事業統合させる。年内最終合意をめざす。三菱UFJ<8306>は10.9円高、みずほ<8411>は1.1円高、野村HD<8604>は6.1円高だった。

 燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」を12月15日に723.6万円(税込/202万円の国の補助金がつけば約520万円)で国内発売すると発表したトヨタ<7203>は、みずほ証券が目標株価を9000円まで引き上げ173円高で年初来高値更新。ホンダ<7267>は2015年度一般発売予定の燃料電池車の最新試作モデルを公開し46円高。心臓部の燃料電池を従来より約3割小さくし大人5人が座れる車内空間を確保した。価格は未定。水素ステーションで燃料電池車に水素を供給する岩谷産業<8088>は39円高で3日続伸し、三菱化工機<6331>は31円高、オーバル<7727>は22円高で値上がり率12位。日産<7201>は15.5円高、富士重工<7270>は123.5円高、マツダ<7261>は63円高、三菱自動車<7211>は25円高だった。

 韓国の公正取引委員会は、自動車用ベアリング価格をめぐる談合があったとして韓国、日本、ドイツの企業に合計約82億円の課徴金を課すと発表し検察への告発も決めた。日本企業で対象に入った日本精工<6471>は51円高、ジェイテクト<6473>は60円高、ミネベア<6479>は61円高、不二越<6474>は3円高で、対岸の火事? しかし韓国もやれば、日本の公正取引委員会もやる。自治体の消防救急デジタル無線の入札をめぐる談合があったとして独占禁止法違反の疑いでNEC<6701>、OKI<6703>、日本無線<6751>、日立国際電気<6756>、富士通ゼネラル<6755>の5社を立ち入り検査したニュースが伝わると、売買高8位のNECは5円安、同6位のOKIは9円安で値下がり率5位、日本無線は15円安で同4位、日立国際電気は76円安で同2位、富士通ゼネラルは86円安で同1位と、逆行安で値下がり率ランキングをにぎわせた。

 「住宅と自動車」への選択と集中を進めるパナソニック<6752>は、世界の住宅事情などを調査する「住宅研究所」を設立し44円高で年初来高値更新。海外市場にも打って出る。シャープ<6753>は4円高、東芝<6502>は10.8円高、日立<6501>は25.4円高だった。サクサHD<6675>はストップ高の50円高で年初来高値を更新し値上がり率1位。法務省が空港の出入国審査に、機械で顔を識別して本人確認を行うシステムを2017年度中にも導入する方針を固めたと報じられた。サクサHDは今夏、その実証実験に参加している。キーエンス<6861>はドイツ証券が目標株価を引き上げ1880円高だった。