【今週の展望】日経平均と為替の「永すぎた春」が終わる時?

2014年11月24日 20:16

 日経平均と為替レートはこれまで、仲のいい恋人同士のようだった。日経平均が上がる時も、下がる時も、「為替とどちらが先に動いたの?」などと詮索するのも野暮というもの。どちらからともなく、あうんの呼吸で微笑みあい、いつでもどこでも連れ添って歩いていた。それは二人で平地をゆく時も、二人で山を駆け上がる時も、二人で谷底に滑り落ちる時も、変わることはなかった。

 しかし前週は、愛のきずなを試し、愛のゆくえを疑うかのように、二人の間にすきま風が吹いた。為替レートがどんどん円安に進んでも、日経平均はそれまでのように寄り添っていけなくなった。14日夕方と21日夕方を比べると、為替のドル円は2円あまり、ユーロ円は3円あまりも円安方向に動いていたが、日経平均は14日終値から21日終値までの間に133円下落し、円安の進行にもかかわらず5週間ぶりにマイナスの週となった。

 20日夕方の東京市場では、ドル円レートが118.98円と119円に最接近した時間帯があった。為替のテクニカル分析では21日移動平均乖離率がよく使われるが、119円という水準は14日からの上昇が3円を超え、前日19日の21日移動平均からプラス4%以上も乖離し「ドル買われすぎ」の過熱感が充満していた。一方、日経平均は20日終値(17300.86円)時点の25日移動平均乖離率はプラス6.6%で、14日の10.03%から「買われすぎ」の度合いは大きく後退していた。為替の疾走についていけない日経平均の戸惑いぶりがよくわかる。こんなことは「円安」と「株高」が必ず連動したアベノミクス相場では今までなかったことで、ひとり取り残された日経平均は「私はもう、あの人にはついていけません」とでもつぶやいていたかのようだった。かつて詩人ルイ・アラゴンは「幸せな愛などない」とリフレインしたが、愛ははかなく破局に向かうのか? それとも切れかかった愛のきずなを再び取り戻せるのか?

 為替と日経平均の「永すぎた春」が「愛の渇き」に直面しているこの状況が今週も続くと考えると、為替レートと日経平均とを切り離して別個に考える必要がある。前週に急伸した為替の円安に日経平均が懸命に追いつくのではなく、一歩引いて独自に動くという想定である。もし為替レートで「ドルの買われすぎ」からの調整が起きても、「私は私」と日経平均はそれにお付き合いせず、下落は小幅にとどまるか、むしろ上昇することもある。

 21日の終値17357.51円のテクニカルポジションを確認すると、移動平均線は17253円の5日線も、16325円の25日線も、15851円の75日線も、15192円の200日線も全て下にある。日足一目均衡表の「雲」は19日にねじれて15422~15523円。12月6日に再びねじれるまで、今週の雲の上限は15451円どまりで1900円以上も下にある。ボリンジャーバンドは25日線+1σの17292円と25日+2σの18529円の間にある。そうした位置関係は「買われすぎ」がかなり進んでいた14日時点と変わっていない。

 しかし、1週間経過する間に133円下落したことで「日柄調整」が進み、オシレーター系指標は「買われすぎ」が改善している。騰落レシオこそ14日の106.46から134.78に上昇しているが、ストキャスティクス(9日Fast)は92.37から73.04に低下。25日移動平均乖離率は6.32%である。その分、前週より上値を追える環境が整ったと言える。

 だとすれば、上値、下値の目安は何か?。考えられるのは前週と同様に「25日線+5%ライン」と「25日線+10%ライン」の間で、それは21日時点で17141~17958円。下値の17141円はボリンジャーバンドの25日線+1σを割り込むのでほぼ妥当かと思われるが、問題は上値である。本来なら「今週は18000円タッチもありうる」と言いたいところだが、その途中にあり、どうしても気になるのが17549円の11月SQ値である。これは14日に上についた「まぼろしのSQ値」で、経験則から12月12日のメジャーSQの日まで上値を押し返す「鉄の天井」になると想定される。このレジスタンスラインは、時代の前に心臓を捧げた23人のように屈強な抵抗をみせるかもしれない。突破するのは容易なことではないと思われる。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは17100~17600円とみる。望ましいのは、過熱の方向に行きすぎたドル円レートが前々週末の115~116円台あたりまで降りてきて、日経平均とのバランスがとれた水準になること。そうなれば日経平均と為替の恋人同士はまた寄り添える。「もしもあなたに会えずにいたら、眠る森でこの心は、疲れ果てて死んでいるでしょう」と、ルイ・アラゴンの詩のように愛を確かめあい、再び仲良く一緒に歩ける日々が戻ってくることだろう。(編集担当:寺尾淳)