外食産業大手のワタミ<7522>は、国内に展開している居酒屋チェーンの「和民」などを、全体の約15%に当たる102店舗閉鎖することを明らかにした。11月11日に発表された2014年9月期中間決算によると、売上高は前年同期比3.7%減となり777億円にとどまった。営業損益は10億円の赤字で、中期純利益は41億円の赤字となった。前年同期の営業損益は24億円の黒字、中期純利益は5億円だったのに対し、大幅な落ち込みとなっている。中間期の営業赤字は1998年に株式上場を果たして以降初めてのこととなる。
4月に実施された8%の増税対策として、ワタミはメニュー価格を1割程度値下げし、顧客獲得を目指していたが、思うように客足は伸びなかった。既存店の形態を見直し、新たな事業を打ち出す必要性があるとして今回の大規模閉店というテコ入れに至った。また業績悪化を受けて、取締役と執行役員の報酬を10月からの半年間、1ヶ月あたり1割~3割程度減額することを決定した。
ワタミに限らず、居酒屋チェーン店は客離れが深刻だ。外食産業総合調査研究センターが発表している「外食産業市場規模推計」によると、「居酒屋・ビヤホール等」の市場規模はピーク時の92年の1兆4629億円から年々縮小傾向にある。2010年では1兆24億円、11年には9,928億円、12年で9,780億円と厳しい状況が続いており、居酒屋チェーン事業全体で苦戦が強いられている状況にある。しかしその一方で、コスプレ、相席、近未来、水族館、監獄、忍者、学校など、非日常な体験が楽しめる個性的かつユニークなコンセプトを打ち出した居酒屋が次々と出現。13年の市場規模は1兆96億円まで回復した。
ワタミでも、昔ながらの居酒屋メニューを取りそろえ、値段の手ごろ感を売りにした「和民」や「わたみん家」は不振に悩む一方で、米国のレストランやバーをイメージした「TGI FRIDAY」や、炭火焼き鳥などが楽しめる「炭旬」は好調だ。これまでの大衆居酒屋というイメージを打ちこわし、新規に事業開拓していく必要に迫られているのは明らかだ。顧客それぞれのニーズに沿って、今後さらに居酒屋の細分化が進んでいくのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)