前回、2012年末に行われた衆議院選挙は戦後最低の投票率59.3%だった。政党の乱立、年末で忙しさや天候不順が影響したことも投票率低下を招いたと言われている。今回もそうした要素は同じで、さらに消極的なムードも合わされば投票率はさらに低下する恐れがある。
11月21日衆議院が解散され、選挙は12月14日投開票と決まった。安倍首相は「消費税増税を先送りし、アベノミクスの信を問う」というが、「なぜ今この時期に」と国民からは戸惑いの声も大きい。「大義なき解散」という言葉も飛び交っているが、最も大切な国民が置いていかれている感が否めない。
与野党の論戦が始まった一方で、各地では市民団体などによる選挙に関するアンケートイベントや調査も行われ始めている。解散翌日の22日には、早速JR川﨑駅前で、投票先や選挙で重視して見極めたいテーマなどの調査が行われた。テーマには、与野党が論戦を続けている「景気対策」や「消費税問題」の他、「集団的自衛権」、「TPP問題」、「生活・福祉問題」、「沖縄辺野古基地」、「原発再稼働」、「秘密保護法」などが挙がった。調査に答えた人々からは、景気対策問題だけに焦点を絞らず、与野党とも他のテーマも立場を明確にして取り上げてほしいという声が多かったようだ。
他にもインターネット上でも、各党の主張や業績などをまとめ、投票先を考えるサイトなども続々と更新されつつある。前回、前々回の国政選挙からそうしたネット上での関心も強まり、若い層を中心に、投票へのきっかけや、投票先を考える指標として利用されている。
そうしたアンケートや、インターネット上の意見などを見ていると、今回の選挙に対してはっきりと出ているムードがある。それは「投票したい政党が見つからない」という消極的な空気や諦観だ。支持政党がはっきりとしている層よりも、今回は、アベノミクス効果が実感できず与党には不満・不信があるものの、代わりに任せられそうな政党・候補者が見当たらず戸惑っている層が多いようだ。自民党の一強他弱とは言うものの、その「自民一強」も積極的支持というよりは、「他が無いから消去法で自民党」という消極的支持の様相がうかがえる。
この状況で懸念されるのが、投票率の低下だ。2012年末に行われた衆議院選挙は戦後最低の59.3%という投票率だった。政党の乱立で論点が見えにくかったことや、師走選挙となり、忙しさや天候不順が影響したことも投票率低下を招いたと言われている。今回もそうした要素は同じで、さらに消極的なムードも合わされば、投票率はさらに低下する恐れがある。
しかし、投票率が下がると地盤のある与党が圧倒的に有利になってしまう。仮にそれで与党が大勝しても、それは本当に「明らかな信任を得た」と言えるのだろうか。国民の選挙への戸惑いや閉塞感を打ち破るためにも、与党は今回の解散・総選挙に対しもっと明確な説明をすべきだし、各野党は与党以上に明確な指針と政策を提示すべきだろう。そして国民も、諦観ムードに呑まれず選挙に臨む姿勢が必要だ。(編集担当:久保田雄城)