来年度に向けて改正が検討されている税制で、経済産業省は10月23日、外形標準課税を拡大した場合の試算を発表した。試算では都市部よりも地方の企業に負担が重くなる傾向で、ほとんどの地域で税負担が増えることが分かった。
外形標準課税とは2004年4月1日から導入された制度で、資本金が1億円を超える企業に対し、会社の建物の床面積や従業員の数、給料や賞与、退職金、売上高などに応じて課せられる。赤字に関係なく徴収することができるのが特徴だ。
政府は法人税の実効税率を現行の約35%から数年間をかけて20%台に引き下げていく方針で、財源の穴埋めとして外形標準課税などを強化していく。今回経済産業省が行った試算は、現在の実効税率を1.5%引き下げ、代わりに外形標準課税を2倍に拡充した場合で、12年度決算に基づき全国の約2万社を対象に影響額を算出。その結果、もっとも負担が増したのが北海道で16億円の増税となった。次いで長野県7億9,000万円、岩手県6億1,000万円、宮城県5億7,000万円、福岡県5億6,000万円となった。
反対に、大幅減額となり税負担が最も軽くなったのは東京都でマイナス256億7,000万円、続いて大阪府マイナス52億2,000万円、愛知県マイナス30億5,000万円、埼玉県マイナス6億3,000万円、兵庫県マイナス2億2,000万円となった。全体では負担が増すのは35道府県で、税負担が軽くなるのは12都府県となり、尚且つ、都市部が優遇され地方は不利になることが明らかになった。
政府は12月末までに来年度の税制改正の内容を具体的に詰める方針だが、経済産業省は今回の試算結果から格差拡大の可能性を指摘し、政府に税制幅の調整を求めるとしている。従業員の賃金にも課せられる外形標準課税の拡充は、雇用の縮小や企業の経営圧迫にもなりかねない。対応策として政府は、企業が従業員の賃上げを実施した場合、外形標準課税の負担を軽減する措置をとるとしているが、経営が厳しい企業ほど負担が増すことに変わりはない。外形標準課税をできるだけ抑え、経済成長を促進させる施策を充実させることが重要ではないのか。(編集担当:久保田雄城)