名車概論:ヤマハ発動機と開発したDOHCエンジン2基を搭載した国産初のスペシャルティ/トヨタ・セリカ(Celica)

2014年12月13日 13:45

Celica GT

「2T-G」エンジンを搭載した初代セリカ1600GT、斬新でお洒落なスポーツクーペだった。セリカのヒットで後に追随するホンダ・プレリュード、日産シルビアなどの通称「デート・カー」が1980年代にブームとなる。しかし、今にしてみると当時のスポーツカーは、何と内股だったことか(笑)?

 1969年10月24日に第16回東京モーターショーが開幕した。70年代を目前にしたこの年、3月に東名高速道路が開通するなど、本格的な高速モータリーゼーションを迎え、国産車の高性能化が急速に進んだ。ショーはスポーツモデルやモータースポーツ車両の出品が目立ったという。そのなかで注目を集めたのは、トヨタのブースを飾った「EX-1コンセプト」だ。そのEX-1は翌年の12月、つまり1年以上経った1970年12月にデビューした。

 それは、日本初のスペシャリティカーと言われる「初代トヨタ・セリカ」である。デビュー時のボディタイプは、写真の2ドアクーペのみの設定で、最上級のグレードの1600GT(TA22型)には、2T型OHVエンジンをベースにヤマハ発動機製のツインカム(DOHC)ヘッドが載った「4気筒2T-Gエンジン」が搭載された。このエンジンは気筒あたり2バルブの8バルブエンジンながら、黒い結晶塗装が施されたヤマハの刻印があるDOHCシリンダーヘッドが載り、ソレックスのツインキャブレターが当時の有鉛ハイオクガソリンを供給。1588cc直列4気筒のレイアウトから、当時としては破格の115ps/6400rpmの最高出力と14.5kg.m/5200rpmの最大トルクというアウトプットを発揮していた。

 組み合わせたトランスミッションは3~4速が一般的だったその時代に、GTグレードはスポーツを意識させる5速マニュアルだった。

 そのセリカ1600GTが、ラインアップ中もっとも高価なグレードにもかかわらず、セリカの大ヒットモデルとなる。

 この搭載エンジン「2T-G」は、セリカと車台を共有化し、同時にデビューした2ドアセダンのカリーナにも後日搭載された。その後、同社のカローラ&スプリンターの2ドアスポーツクーペであるTE27型レビン&トレノにも搭載され、「27レビン&トレノ」としてデビューし、2T-Gは一躍トヨタ製「テンロク」スポーツエンジンとして脚光を浴びることとなる。後期にはカローラ&スプリンター・セダンにも搭載され「セダンGT」としてコンパクトな「羊の皮を被った狼」として国内ラリーなどで活躍した。

 初代セリカのボディサイズは全長×全幅×全高4215×1620×1280mm、ホイールベース2425mmと非常にコンパクトだった。現状でトヨタ製スポーツ「86」の寸法4240×1775×1285mm、ホイールバース2570mmに非常に近いことが分かる。パーソナルスポーツカーをトヨタが作ると、やはりこの辺りの寸法に落ち着くと言うことなのだろう。車幅が大きく異なるのは、「86」が側突などを考慮した現在の安全ボディを確保したこととハンドリング性能アップのためだと思われる。

 その後、セリカは1973年4月には追加車種としてテールゲートを備えた「セリカ・リフトバック(LB)」を追加。同時に、やはりヤマハ発動機と協働開発した2リッター4気筒DOHCエンジン「18R-G」が搭載される。このエンジンは145ps/6400rpm、18.0kg.m/5200rpmを発生し、当時として国内トップクラスのアウトプットを持っていた。そして、またセリカLB2000GTが大ヒット作となる。そのころの日産の人気モデルだったスカイラインGTが2リッター直列6気筒ながらセリカの4気筒エンジンより出力が低い130psだったことをトヨタはTV-CMで揶揄し、18R-G搭載車がドリフトする映像とキャッチコピー「名ばかりの“GT”は道を開ける」という挑戦的なナレーションを流し、日産スカイラインを挑発していた。

 トヨタ製DOHCエンジンの2T-Gと18R-Gの2基は、ソレックス・ツインキャブでスタートし、後年は燃料噴射装置のEFIに換装しながら排気ガス規制を乗り越え、1982年代に登場する4バルブツインカムエンジンで2000ccの6気筒1G-GEU、1983年登場の同じく4バルブツインカム1600ccの4気筒4A-GEU登場まで、トヨタ製スポーツモデルを支える主力エンジンとして君臨した。

 1970年代にフォード・マスタングを模倣したと伝えられるフルチョイス・システムで登場したスペシャルティモデル・初代セリカのために開発したヤマハ・トヨタ協働のツインカム「2T-G」があった。2T-Gは「テンロクの歴史的な名機」といえる。その、セリカはフルタイム4WD車などもラインアップしてWRC(世界ラリー選手権)でも活躍、派生車種として大型クーペ「セリカXX」、後の「スープラ」をも輩出した。しかし、国産ミニバンブームの影でスポーツ&スペシャルティカーは人気を落とす。7代目のT230型が2006年4月に生産を終え、セリカは36年の歴史に幕を下ろすこととなった。(編集担当:吉田恒)