電気もリサイクルする時代、エネルギー回生市場拡大を加速する新型チップ

2014年12月13日 21:23

ローム

蓄電池の需要が高まる中、ロームは小型で簡単に実装でき、保護機能も内蔵したEDLCセルバランスICを開発した。EDLCのエネルギー回生市場拡大を加速する、業界初の1チップICとなる。

 我々の生活の中心は今「電気で動くもの」で埋め尽くされている。しかも、電化製品はこれまでコンセントにつないで使うことが当たり前だったものが、少しずつ様変わりし、いつの間にか、身近なものほど電源から離れて使うことが多い世の中になった。例えば、スマートフォンやノートパソコン、電気自動車やハイブリッド自動車など、現代人の生活に必要なものほど「電池」を必要としているのだ。

 それに伴い、蓄電デバイスも日々進化を遂げている。現在使用されている蓄電デバイスの代表格といえばリチウムイオン電池だが、モバイル情報電子機器の高性能化や利便性の向上、また電気自動車などでも航続距離延長のためには、現行のリチウムイオン電池だけではすでに物足りない感が否めなくなってきている。さらに高性能化する、もしくはそれに代わる何かが求められているのだ。

しかも、スマートハウスや自動車用途、太陽光・風力の発電などにも使われることを考えれば、蓄電容量だけでなく、高度な信頼性や安全性、長期寿命性能を兼ね備えていることが必須となる。

 そこで今、最も注目され、市場が急速に拡大しているのが電気二重層キャパシタ(以下・EDLC)だ。EDLCはリチウムイオン電池と比較して、急速充放電可能、長寿命、高い安全性、環境負荷軽減など多くの利点を持っている。しかし、近年の大容量化や高電圧化の要求に応えるために直列に接続した場合、それぞれのEDLCセルにかかる電圧にばらつきが生じ、寿命もばらつき、安全に機能を満たす期間も短くなってしまうという弱点があった。ばらつきを抑えるためには多くの半導体部品でセルバランス機能を構成する必要があるが、部品の増加や、その部品スペース確保の問題、設計負荷、信頼性確保などが課題となっていた。車載や産業機器などの様々なアプリケーションで使用される機会が想定されるだけに、EDLCの普及を確実なものとするためには、この課題を早急に解決する必要があった。

 そんな中、京都の半導体メーカーであるローム株式会社が、EDLCの安定化・長寿命化、小型化に貢献するセルバランスIC「BD14000EFV-C」を開発した。本製品は、従来20個以上の半導体部品で構成されるEDLCのセルバランス機能を1チップで実現するICで、業界初の製品となる。部品スペースがなんと約38%も削減される上、部品毎のばらつきを気にする必要がなくなるので、小型でシンプルかつ高信頼のEDLCシステムを構築することが可能になる。

 同社では、2014年11月よりサンプル出荷を開始しており、年明けの2015年1月からは当面月産1万個の体制で量産を開始する予定。新年早々、EDLCの需要が加速しそうだ。(編集担当:藤原伊織)