脱原発・原発ゼロ社会をめざすのか、原発との共存をめざすのか。世論を2分している問題だ。来年の早い時期に九州電力川内原発の再稼働が言われる中、原発に対する国民の判断を示す選挙にもなる。各党の公約をみた。
東京電力福島第一原発事故の甚大な被害と数十年にわたる廃炉への道のりなど、教訓を踏まえ、民主党政権で「2030年代の原発ゼロをめざす」方針が示されたが、政権交代による安倍新政権は原発ゼロ社会への方向を大きく転換。原発を「重要なベースロード電源」とし、原発の活用を表明するとともに「原発再稼働を進める」と表明している。
脱原発・原発ゼロ社会をめざすのか、原発との共存をめざすのか。世論を2分している問題だ。来年の早い時期に九州電力川内原発の再稼働が言われる中、原発に対する国民の判断を示す選挙にもなる。各党の公約をみた。
自民党は「原子力は安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源との位置付けの下で活用していく」と原発活用を明言した。
また、現在停止中の原発再稼働について「安全性を最優先し、原子力規制委員会により新規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原発再稼働を進める」とした。再稼働に向け「国も前面に立ち、立地自治体など関係者の理解と協力を得る」と積極的な姿勢を表明。
同じ与党の公明党は「原発に依存しない社会・原発ゼロを目指す」と自民と姿勢は異なる。原発ゼロへの当然の帰結として「原発の新設を認めず。原発の40年運転制限制を厳格に適用する」としている。再稼働については「原子力規制委員会が策定した厳格な規制基準を満たすことを大前提に、国民、住民の理解を得て判断する」としている。
さきの九州電力川内原発の再稼働では「地元の同意」の範囲をめぐり、国会でも議論になったが「行政区割りで立地の自治体だけを地元同意の対象にするのではなく、本来、その実効性や趣旨からすれば半径30キロ圏内のすべての自治体の同意を取り付けるのが筋だ」との声も多い。通常国会でもこの議論は今後出てこよう。
野党の公約をみると、野党第一党の民主党は「2030年代原発ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入する」としている。再稼働については「責任ある避難計画がなければ、原発を再稼働すべきではない」と明記。「分散型エネルギー推進基本法を制定し、環境に優しいエネルギーの地産地消を進める」ことをあげている。
維新の党は「原発依存から脱却」とし「安全規制、使用済み燃料の総量規制・中間貯蔵、損害賠償のそれぞれにつき、ルール化を行う」としている。また「電力自由化の推進、発送電分離と電力の市場取引の拡大、送電系統の強化を国家事業として推進する」としている。原発再稼働には「核のゴミの最終処分の解決なくして原発再稼働なし」とし「原発再稼働責任法」を制定するとした。
次世代の党は「新エネルギー技術の開発、原子力技術の維持」をあげ「電源の多様化で脱原発依存」を図るとしている。「メガフロート上の洋上風力発電などで水素を生成し、燃料電池にエネルギー供給すステムを構築。日本海のメタンハイドレートの開発、電源構成の多様化で脱原発依存体制を構築していく」とした。
日本共産党は「原発ゼロ社会」を公約。「即時原発ゼロを決断し、すべての原発を直ちに廃炉プロセスへ」進めていくとしている。また、再生可能エネルギーの買取り拒否をやめさせ、自然エネルギー大国への転換をめざす」。再稼働については「ストップ」。ドイツの例をあげ「原発ゼロを決断したドイツでは再生可能エネルギーが6%(2000円)から28.5%(2014年上期)に急速に普及」としている。
生活の党は「原発の再稼働・新増設は一切容認しない。脱原発こそ、成長戦略」と党の政策重要課題にあげている。「原発はすべて廃止し、太陽光、風力、地熱、水力など安全な姿勢可能エネルギーを急ピッチで普及させる。エネルギーの地産地消を推進し、地域経済の発展、雇用拡大を実現する」。「最新型の火力発電もあれば、近海にメタンハイドレートもある。燃料電池車など水素エネルギー技術は世界トップ水準」などとし、日本には原発に代わるエネルギー創出能力が豊富にあるとする。
社民党は「脱原発社会」をかかげ「脱原発基本法を制定。原発立地地域支援のための立法で、国が地域振興と雇用対策に責任を持つ」としている。原発再稼働については「川内原発をはじめ、原発再稼働は一切認めない。原発の新増設はすべて白紙撤回。福島第一原発5・6号機と福島第二原発1~4号機、活断層の上に立地することが明らかとなった原発は直ちに廃炉」と明記した。
新党改革は「脱原発する保守政党」をかかげ「超・原発社会」との表現も併用している。「ガスなどの家庭の給湯器を水素電池のエネファームなど『家庭用燃料電池』に置き換えると133万世帯で置き換えれば原発1基分の出力を確保できる。再生可能エネルギーと高効率火力発電所と組み合わせることで原発は不要になり、再稼働の必要もなくなる」としている。
国民が原発やエネルギー問題にどのような選択をするのか。14日の審判が注目される。(編集担当:森高龍二)