NHKはテレビ放送とネットの同時配信サービスを来春する予定だ。それに対し、民放各局は「見逃し配信」などのサービスで対抗している。広告やタレント契約などの権利問題があり、民放でのネット同時配信はハードルが高いが、その垣根を取り払っていくことはできるだろうか。
2014年は、各テレビ局がネット配信に向けての動きを開始した年でもあった。来年度には、NHK(日本放送協会)がテレビ放送との同時ネット配信のサービス開始を見込んでいることからも、そうした動きはより強まっていくと思われる。NHKの同時配信に対抗すべく、民放各局も「見逃し配信」などをはじめとしたサービスを展開している。テレビのネット配信サービスの現状と、来年度に向けた動きをまとめてみた。
NHKはテレビ放送とネットの同時配信サービスを、来春にも開始できるよう調整中だ。10月末にはネット放送の実施基準要綱を発表した。その中でも特に問題となったのがネット業務予算の上限だ。NHKはネット業務予算の上限を受信料の3%である約190億円に設定。この潤沢な予算に、広告収入や有料配信で太刀打ちすることは難しく、民放各社からは「民業圧迫だ」との声も多く上がった。NHKが11月末に総務相に提出した実施基準案からは、当初盛り込まれていた「スポーツ番組の生中継」が同時配信の対象外とされたが、予算に関しては大きな変更はなく、認可を受け次第、最終段階に入ることとなっている。
民放が同時ネット配信に踏み切れないのは、基本的にCMスポンサーの広告収入で成り立っているからだ。CM契約はテレビ放送のみが前提とされ、ネット配信には現状適用されない。そのため、ネット配信時のCMの扱いについてはまだ不確定要素が多い。また、公共の電波による放送と、通信網を使うネット配信では、出演者や使用楽曲などに関する契約も変わってくる。そうした権利問題が民放の同時ネット配信を遅らせてきた。
そこで民放がとっている対抗策が、放送直後の番組をネットで配信する「見逃し配信」だ。すでに日本テレビ〈9404〉は今年1月から、TBS〈9401〉は10月から一部の番組を放送直後に無料配信している。それに続く形でフジテレビ〈4676〉も来年1月から見逃し配信を始める。過去作品のオンデマンド配信と合わせ、サービスを拡大している。
そして徐々に同時ネット配信に向けても、民放も試験的に取り組み始めている。今年3月にはフジテレビがCS放送の番組のネット同時配信した。この12月には、日本テレビも同じ番組を、実験的に地上波デジタル放送・BSデジタル放送・CSデジタル放送・YouTubeの「日テレChannel」の4媒体で1ヶ月間同一週内に放送・配信を行っている。いずれも、広告や権利の問題をクリアにすれば同時配信は可能だということを示した試みだ。
スマートフォンや動画サイトの普及により、「いつでもどこでも視聴できる」ということはコンテンツにとって非常に大きな条件となってきている。権利問題の整理、CMの扱いなど民放には課題は多いが、来年度はそうした垣根がより一層取り払われていくのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)