2020年の東京オリンピックへ向けて、政府は英語教育に力を入れる。今年はじめに発足した有識者会議が10月に出した報告書には、「アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべき」との文言が踊り、英語での高度なコミュニケーションを重視した教育が目指されている。一方で、半数近い中高生が、将来「自分が英語を使うことはない」と考えていることが、ベネッセ教育総合研究所の調査で分かった。調査は今年3月、全国の中学1年生~高校3年生6294人を対象に、質問紙を送付して実施。
授業中に「英文を日本語に訳す」「単語や英文を読んだり書いたりして覚える」「単語の意味や英語のしくみについて先生の説明を聞く」「文法の問題を解く」は、すべての学年で、ほぼ8割以上の学生が実行していた。一方、政府が「グローバル人材育成」のために必要とする、「自分の気持ちや考えを英語で書く」「自分の気持ちや考えを英語で話す」は、中学2年の6割弱をピークに学年が上がるほど減少していた。
学校での英語教育は、今でも和訳や単語の暗記が中心で、「話す」「書く」などのコミュニケーションはあまり行われていない。ただ、9割近くの中高生は「英語を話せたらかっこいい」(中学生 88.5%、高校生 90.5%)と思っており、学校での教育と、実際に身につく能力にはギャップがあるようだ。彼らに「英語の勉強で大切なこと」を3つまで選んでもらった結果では、トップが「英語でたくさん会話をする」(中学生 53.4%、高校生 59.8%)で、続いて「単語をたくさん覚える」「文法の知識を増やす」「英語をたくさん聞く」となっている。
さらに「将来の社会での英語の必要性」を聞いたところ、中高生の9割(中学生90.9%、高校生91.1%)が、何らかの形で英語が必要だと回答し、「英語を使うことはほとんどない」は1割に満たなかった。しかし、「自分が英語を使うイメージ」については、半数近い中高生が「英語を使うことはほとんどない」(中学生 44.2%、高校生 46.4%)と回答している。今の学校で習う内容では、「英語でのコミュニケーション力」が身につくとの確信がもてないためか、自分が英語を使いこなすイメージがもてない中高生が目立つ結果となった。(編集担当:北条かや)