アジア圏旅行客増大に対応 通訳案内士制度見直しへ

2015年01月15日 18:51

画・アジア圏旅行客増大に対応 通訳案内士制度見直しへ

観光庁は「通訳案内士」の資格見直しについて検討会を開催。2014年の外国人旅行客は過去最多となったが、国内の観光サービスは十分とはいえない状況だ。外国人旅行客のニーズに応じた対応が必要だとして政府は法改正も検討している。

 観光立国を目指すアベノミクス。2020年には東京五輪・パラリンピックが開催予定で、世界からも注目が集まっている。昨年度の外国人旅行客は過去最多となり、自治体や企業でも観光誘致活動やPRが盛んだ。そんな中、観光庁が国家資格である「通訳案内士」についての見直しを検討することが明らかとなった。

 通訳案内士とは外国人旅行客に対して外国語で通訳し、観光案内をする資格だ。通訳案内士法によって制度が規定されており、外国人旅行客の観光ガイドとして報酬が発生する仕事に就くには、この資格がないと違法となる。資格を利用して就業するには、都道府県知事の登録を受ける必要がある。

 通訳案内士制度は60年以上前に創設されたもので、現代社会のニーズにマッチしていない部分がある。観光庁は「通訳案内士のあり方に関する検討会」を開き、識者らと議論を深めてきた。制度が始まった当初は欧米からの旅行客が大半だったが、近年ではそのほとんどをアジアの旅行客が占めている。以前は大型観光バスによる団体ツアーが主流だったが、最近は個々の好みで旅行先を決定する個人旅行への需要が増大。東京や京都以外の観光地に興味を示す外国人も増え、北海道や九州など、地方に興味を持つ外国人旅行客は多い。

 このため、観光庁は、日本側が想定するガイドツアーではなく、外国人旅行客のニーズを反映させることが必要だと指摘。通訳案内士の仕事には、個別ニーズに合わせた観光ガイドを務めることが制度改正の論点となっている。外国人客の要望に沿って、1~2時間程度の観光やショッピングなどに付き添うなど、短時間サービスを充実させることも目標のひとつに挙げられている。特に大きな課題なのは、アジア圏からの旅行客の増加に対し、中国語や韓国語の通訳案内士が不足ぎみになっていることだ。アジアからの旅行客は全体の7割を占めるというのに対し、対応できる通訳案内士は資格保有者全体の2割にも満たない。

 政府は通訳案内士法の改正も検討しており、早ければ今年の夏までに結論を出すとした。外国人旅行客が増加し、観光業が勢いづいている今、観光立国に向けての土台作りが急務となっている。(編集担当:久保田雄城)