FacebookやTwitter、LINEなどのSNSを利用したマーケティングが注目を集めている。企業や団体が広報やキャンペーンに利用するのをはじめ、2014年末に行われた衆議院選でも、初めてネット利用が解禁されたとあって、選挙戦にSNSが積極的に利用されていた
今、FacebookやTwitter、LINEなどのSNSを利用したマーケティングが注目を集めている。企業や団体が広報やキャンペーンに利用するのをはじめ、2014年末に行われた衆議院選でも、初めてネット利用が解禁されたとあって、選挙戦にSNSが積極的に利用されていた。また、首相官邸においても常時、SNSを利用した情報発信が行われている。時代はマス・マーケティングからソーシャルメディア・マーケティングへと移行しつつあるようだ。
株式会社ICT総研が2014年8月にまとめた調査報告によると、日本国内におけるSNS利用者は2014年末には6023万人、2016年末には利用者数は6870万人、ネットユーザー全体に占める利用率は66.5%に達する見通しだという。また、月平均45万人もの勢いで利用者は増加し続けており、SNS利用者1人あたり平均で5件ほどのSNSに登録していることが分かった。
ソーシャルメディア・マーケティングは、最先端のデジタルマーケティングであるが、その真髄は広報戦略の原点ともいえる「口コミ」にある。友人や知人、またはその知人がつながっている人、芸能人や著名人が「この商品は素晴らしい」「こんな面白いキャンペーンを見つけた」などと自発的に拡散してくれることで、ネット上に「口コミ」を促し、低コストで商材の認知度を高めて顧客の獲得を図るという、もっともシンプルでアナログな仕組みと考え方が根底にあるのだ。
とはいえ、一言でソーシャルメディア・マーケティングといっても、その手法は様々だ。例えば、facebookを利用したものでは、スポーツ用品メーカーのNIKEによる「TAKE MOKUM」という取り組みが面白い。これは、ランナーが走ったコースを衛星マップ上で共有するというもので、中には顔やゲームキャラクター、文字を象ったユニークなコースも続々とアップロードされ、ランニングの新しい楽しみ方を提案して話題となった。
また、LINEを利用した日本国内のマーケティングとしては、オリジナルの企業スタンプを配信するものが主流だが、これをさらに購買に直結させるものとして「マストバイスタンプ」という手法が注目され始めている。これは、LINE上で入力するとオリジナルスタンプが入手できるシリアルコードを商品に個別に添付して販売するという方法で、これをいち早く取り入れたJT社の清涼飲料水「桃の天然水」は、4週間で20万ダウンロード、つまり20万本の売り上げに貢献したという。
さらに、昨年業績が絶好調だったヤマハ発動機<7272>の国内販売子会社となるヤマハ発動機販売も、ソーシャルメディア・マーケティングを積極的に活用している企業のひとつだ。しかも同社のやり方はノベルティの配布や割引セール情報などでは収まらない。
同社は昨年、前2輪のLMW(リーニング・マルチ・ホイール)といわれる三輪バイク「TRICITY(トリシティ)MW125」を発売して話題を呼んだが、このTRICITYアンバサダーとして首都圏5大学のミスコン最終候補者の中から5人を「ミスTRICITY」として選出、PR活動を行っている。その一環として、ミスTRICITYのうち、青山学院大学3年生の安倍萌生さん、慶応義塾大学2年生の水谷映里さん、そして立教大学2年生の塩田結以さんの3人がAT小型限定普通二輪免許の取得にチャレンジする予定だ。中でも安倍さんは今年、日本一周の旅にチャレンジし、その一部区間をTRICITYで走行する予定をしており、SNSでもその様子を配信するという。ミス青山学院2014グランプリに輝き、ネット上でも話題沸騰中の安倍さんだけに、その等身大の挑戦が大きな話題を呼びそうだ。また、ただのキャンペーンガールに留まらないところが、男性だけでなく女性ユーザーの共感も得られるのではないだろうか。
日本のソーシャルメディア・マーケティングはまだ、ノベルティやクーポンなどの配布を行うことが主流だが、ソーシャルメディア・マーケティングの本質は、ヤマハやNIKEのような活用にあるのではないだろうか。商品やサービスを売り込んだり押し付けたりするのではなく、その商品を利用した新しい楽しみ方、遊び方、さらにはライフスタイルの提案が「いいね」やリプライ、シェアなど、ユーザーの積極的な口コミを促すのだろう。こういう企業が増えてくれば、世の中はもっとクリエイティブに楽しくなりそうだ。(編集担当:松田渡)