【今週の展望】「灰色の1月」は我慢する週がもう1週間必要

2015年01月18日 20:29

 しかし、そうやって外部要因にさいなまれるのは、国内にそれに対抗して買い向かっていけるだけの強い材料が見当たらないためでもある。決算発表の端境期なので企業業績は当てにならない。経済指標は強弱まちまち。最も頼りになるはずの政策関連のニュースも年明け早々は活発だったが、新年度の政府予算案が出た頃には一段落していた。史上最低を更新する国内長期金利も全く好材料にならない。そうやって買いのエネルギーが高まらないまま、海外発のニュースに翻弄されて漂流したのが前週だった。

 そして今週は20日の中国のGDPもさることながら、22日に最も警戒すべき中央銀行イベント「ECB理事会」がある。大方の予想は金融緩和の実施なので、それが発表されるとユーロ安円高になり短期的には日本株にとって下げ要因。もっとも、予想に反して金融緩和が見送りになっても、ヨーロッパの失望売りがアメリカを経由で地球を周回し日本株に波及しかねない。「どっちみち株安」だが、前週末のスイスフランの乱高下でユーロが対円で大きく下落し、それが金融緩和実施というECBの結果も織り込んでくれてユーロは底堅いという見方もある。それなら日本株への影響は限定的だが、実際のところはフタを開けてみるまでわからない。15日のスイス国立銀行の「無期限介入中止」の決定も話を複雑にしており、25日のギリシャの総選挙の結果も危惧される。となると今週はそれへの警戒感から「ECB理事会、ギリシャ総選挙待ちの様子見の週」になり、上値は追いづらいと考えていたほうがいいだろう。

 もちろん20~21日の日銀の金融政策決定会合で、ミニ版であっても追加緩和策が出てくれば話は別だが、黒田総裁は「戦力の逐次投入はしない」と繰り返し言っているので望み薄。当てにしないほうがいい。それでも金融政策現状維持が決して悪材料にならないのがまだ救い。今週、株価上昇の引き金を引く出来事があるとすれば、それは国内よりも海外で、少しは期待できそうなのがアメリカの主要企業の決算発表や住宅関連経済指標の改善でNYダウが値を戻すこと。鬼が出るか蛇が出るかわからない中国のHSBCの製造業PMIが週末の23日なのも助かる。

 さて、そんな今週のテクニカルポジションだが、16日の日経平均終値16864.16円は日足一目均衡表の「雲」(16日時点で16225~17112円)の中にある。前週は13日、15日の終値は「雲」の上に出ていたが、雲の上限が日々上昇していったので、ローソク足は最後は「雲」の中にからめ取られて終えた。今週は、雲の下限は16279円で一定だが、上限が20日は17520円、23日は17454円と16日終値から500円以上も高い位置にあるので、終値で「雲」の上に出ることなく終わる可能性が高いだろう。

 移動平均線は、25日線は17319円で455円も上にあるが、25日移動平均乖離率はマイナス2.63%でマイナス5%に届かず「売られすぎ」とは言えない。5日線も17010円で上にある。75日線は16678円で下にあるが、16日にはザラ場でこれを割り込んだ時間帯があった。200日線は15655円で1209円も下にある。ボリンジャーバンドでは、16日終値は25日線-2σの16579円と25日線-1σの16949円の間にある。ニュートラル・ゾーンではないが、これも「売られすぎ」とは言えない。16日の安値も25日線-2σを割り込まなかった。16日の騰落レシオは80.46で前週では最も低かったが、これも70よりも上で「売られすぎ」ではない。

 このように、前週は外部要因に振り回されてボロボロ売り込まれたイメージがあるが、テクニカル指標に「売られすぎ」なものが見当たらず、自律反発はちょっと期待できない。したがって今週、15日のスイスショックのような突発的な出来事があると、日経平均はズルズルとさらに下落していく恐れがある。では、どこで下げ止まるか? 75日線の16678円、ボリンジャーバンドの25日線-2σの16579円、25日移動平均線マイナス5%の16453円、下値支持線の役割を果たす日足一目均衡表の「雲」の下限の16279円(今週)、ボリンジャーバンドの25日線-3σの16209円などが候補になりそうだが、16日の後場に516円安を244円安まで圧縮した「大返し」の力強さを見ると、底堅く75日移動平均線の16678円か、16日安値の16592円あたりでいいように思われる。中間をとって16635円近辺か。

 一方、上値のほうはすでに述べたようにファンダメンタルズ的にみてあまり多くを期待できない週なので、上値抵抗線になる日足一目均衡表の「雲」の上限(今週17454~17520円)は言うに及ばず、25日移動平均線の17319円の回復もちょっと厳しいとみる。ボリンジャーバンドの25日線-1σの16949円は難なく突破できるとしても、17000円の大台を回復して100円程度上積みしてそれで精いっぱいだとみる。というのは前週、スイスショックの16日を除く13~15日は17000円台を回復した時間帯があったが、終値ベースでは15日の17108円どまりだったからである。様子見ムードが強まる今週が前週よりも力強く上昇できるとは考えにくい。

 ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは16635~17100円とみる。とはいえ、「我慢する今週」を何とかやり過ごせば、1月最終週になる来週はECB理事会も中国のPMIもギリシャの総選挙も通過してアクが抜けてくる。3月期決算企業の4~12月期決算が本格化し、おおむね好決算が見込まれるので、日本株も本格的な回復軌道に乗る可能性が高まってきそうだ。「冬来たりなば春遠からじ(If winter comes, can spring be far behind?)」(シェリー Percy Bysshe Shelley)。(編集担当:寺尾淳)