「だったら、お前が(議員歳費を)返せ」。衆議院本会議の代表質問。維新の党の柿沢未途政調会長が昨年4月の消費税引き上げ翌月に、震災復興の財源として2割削減されていた議員歳費が元に戻され、月額25万円、期末手当など含め年額420万円アップになったことを問題提起し、国会議員の定数3割削減、議員歳費の3割削減、使途を定めずに月額100万円が支給されている文書通信交通滞在費の使途公開による透明性確保などを訴えたのに対し、江田憲司維新の党代表によると「自民党の席から『お前が返せ』との野次が飛んだ」。
江田代表は「身を切る改革に賛成もしないような政党にお前が返せ、などという資格なんてない」と強く批判したが、「お前が返せ」と野次った議員には、歳費がもとに戻って、これから身を切る改革についてどのような対応を考えているのか、是非、国民の前で説明願いたい。
さらに問題なのは、議員歳費の削減など身を切る改革に、自民党総裁の安倍晋三総理がリーダーシップを発揮しないこと。
労働界が強く反対し、懸念する労働法制の見直しや農業分野ではJA全中が強く反対する農協改革などには「岩盤規制改革を断行する」と強い論調で改革に挑むとアピールしているのに、自ら身を切る改革となると、いきなり、トーンダウンどころか、自ら乗り出すことなく、問題を外に放り投げる。
安倍総理は議員歳費のカットなどには、柿沢政調会長が「巨額の赤字を出し続けている会社が給与やボーナスを増やすのは民間の常識では考えられない」と指摘し、自民党総裁として身を切る改革にリーダーシップを発揮するよう求めたが、総理は「まずは各党各会派において議論を深め、国会において合意を得る努力を行わなければならないと考えている」と答弁。
自らがやりたいことは国会審議不十分と野党からどんなに批判を浴びてもどんどん閣議決定などやっていく強引さがあるのに、この分野は全くリーダーシップを発揮しない。議員歳費の削減やその下げ幅が民主主義制度維持の根幹に触れるほどの中身なのか。維新の党がそこまで無謀な提案をしているとは思えない。国民感情を反映した良い提案だ。
維新の党の身を切る改革には、党前共同代表で今、名誉顧問の橋下徹大阪市長が市長就任時に給与を4割カット、その後、1期4年毎にもらえる約4000万円の退職金もゼロに決めた。橋下市長はさきの総選挙で「4年で退職金など民間ではあり得ない」と特別職の退職金制度そのものに、極めて常識的な疑問を提起し、なくすべきとしていた。松井一郎大阪府知事(維新の党顧問)も統一地方選終了後に、特別職給与の在り方について審議会で検討する手配といわれている。
橋下名誉顧問は「人事院も虚構」と指摘する。スト権などがないから公務員の給与について勧告する機関だが、算出根拠が大企業に合わせた不合理なもので、国も地方も一般職の平均給与が年額600万円から700万円になっている。民間給与実態をより反映する国税庁の民間給与実態統計調査による民間平均給与に比べ200万円から250万円近いギャップが生じている。
橋下市長が語るように、地方自治体の公務員給与は勤務する自治体の平均給与にすべき。その中で、成績優秀職員とそうでない職員との間に給与差をつけることで、職員のモチベーションを高めるべき。国と地方の公務員の総人件費27兆円の2割カットが図れれば、柿沢政調会長指摘の通り、5兆円の財源が生み出される。消費税10%への引き上げ前に、安倍総理は身を切る改革と公務員人件費2割削減をこそ「断行」すべきだ。(編集担当:森高龍二)