福井県高浜町にある関西電力高浜原発3号機、4号機の再稼働について、原子力規制委員会が12日、再稼働の新規制基準に適合していると決定した。
今後、機器類確認の工事計画や運転管理体制での保安規定が認可され、地元同意などを取り付ければ夏以降の再稼働になりそう。関電は11月稼働を計画している。
考えるべきは、地元同意について「悪しき前例を地元同意枠の基準にはするな」ということだ。九州電力川内原発再稼働への流れで「地元同意」というときの「地元の範囲」が大きな問題になった。
九州電力川内原発では「原発立地市」の薩摩川内市と「立地県」の鹿児島県のみで「地元同意を得た」としている。
重大な事故発生時に受ける被害は同じ30キロ圏内であれば、行政区割りで被害の程度が変わるわけではない。原発立地市と立地県のみを「地元」と決めることは、あまりに現実離れした解釈だ。重大事故から住民を守るための避難計画策定が義務付けられる『30キロ圏内すべての自治体の同意を得ることを必要とする』ことこそ、住民個々に賛否があったとしても、一応、地元の理解を得たといえることになるのだろう。
関西電力は「地元の同意」対象を「立地市の高浜町」と「立地県の福井県」としている。事業者にすればハードルは低いにこしたことはない。しかし、事故時の深刻な影響を考えれば、最低限「30キロ圏内すべての自治体で議論され、議会審議を経て、最終的に首長が判断する」手続きを経るべき案件だ。
30キロ圏内には福井県のほか、京都府、滋賀県があり、近畿の水がめ『琵琶湖』(滋賀県)まで50キロ圏内にある。京都、大阪、滋賀、兵庫など7府県、京都市など4市でつくる関西広域連合は昨年12月25日に「再稼動の判断に当たっては、安全を第一義とし、川内原子力発電所における地元同意のプロセスによることなく、地域の実情に応じて対応すること」を国に求めた。この求めの意味は重い。
また「UPZ(緊急時防護措置準備区域)を含む周辺自治体と事業者との安全協定について、事業者に対し立地自治体並みの内容とし、早期締結に応じるよう指導すること。安全協定によらずとも自治体が国や事業者と平時から情報連絡や意見交換を行い、安全確保について提言できる法的な仕組みを構築すること」「原子力災害時の広域避難対策について実効性ある広域避難計画が早期に策定できるよう、国が主体となって必要な調整を行うこと」なども求めた。
安倍晋三総理は12日の施政方針演説で「原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原発は、その科学的・技術的な判断を尊重し、再稼働を進める」と改めて、原発再稼働を進める姿勢を表明したが、その前提に「国が支援して、しっかりとした避難計画の整備を進める」とし「立地自治体を始め、関係者の理解を得るよう、丁寧な説明を行っていく」と明言した。
避難計画が30キロ圏内すべての自治体で策定され、全自治体が議会での審議を経て、首長が原発再稼働に同意する手続きが完了するまで、原発再稼働は認めるべきではない。
関西広域連合が求めた「川内原子力発電所における地元同意のプロセスによることなく、地域の実情に応じて対応すること」の意味は、多くの国民が、さきの川内原発での地元同意のプロセスに矛盾と疑問を持ち、同じように自治体の首長も問題だと認識を共有していることを示している。川内原発での実態にそぐわない悪しき前例を地元同意枠の基準にしてはならない。安倍総理の演説が実効あるものになるよう、今後の扱いを注視したい。(編集担当:森高龍二)