サントリーが酒類トップに立つ、国内ビール4社の思惑は、ビールが高級化路線を突き進む?

2015年02月21日 19:21

Premium Beer

サントリーはプレモルよりもさらに20%ほど高価なビール「マスターズドリーム」をこの3月に発売する

 大手酒類のキリンHD(ホールディングス)が2014年12月期の連結決算で、主力のビール事業の不振などを背景に減収減益を発表した。キリンの売上高は、前期比2.6%減の2兆1957億円、税引後利益が同62.2%減の323億円だった。昨年の消費税増税後の新商品投入が出遅れ、販売低迷が続いたことが大きな要因だという。ビール類の国内シェアも落とし、ビール類で“ひとり負け”を喫したというわけだ。また、ブラジルでの販売競争激化などで売上高が減少。これに伴って利益が大きく落ち込んだ。

 サッポロHDも酒税を巡り116億円を追加納税したため大幅な減益となった。サッポロは、第3のビールだったはずの「極ゼロ」が「異なる酒税区分の可能性がある」として不足分の酒税を納付した。そのため、増収だった予定が税引き後利益は96.4%減の3億円となった。

 アサヒグループHDは増収増益だった。売上高で3期連続、最終利益が14期連続で過去最高を更新するなど、昨年の消費税率引き上げや冷夏などの打撃があるなかでも安定して業績を伸ばした。結果、営業利益、経常利益、最終利益のすべてでアサヒグループHDが、平成12年の連結決算公表以来、初めてキリンを上回った。なかでもウイスキー事業は、NHK朝ドラの連続テレビ小説「マッサン」効果で大きく伸長した。

 一方で、非上場のサントリーHDの連結売上高は過去最高の2.4兆円規模となり、2015年3月期の通期で業界トップがキリンからサントリーに代わる見通しとなった。サントリーHDの新浪剛史社長は大手新聞インタビューで「連結売上高4兆円を達成し、ウイスキーで世界1位を目指す」と述べ、昨年米ビーム社を買収して誕生したビームサントリーを中心に、世界戦略を加速させる方針を明らかにした。

 サントリーは2014年5月、米ウイスキー大手ビームを約1兆6000億円で買収。2020年までに清涼飲料なども含めたグループ全体で4兆円まで拡大させるという。同社は「4兆円の達成は日本国内だけでは難しい」として、インドや東南アジア、中南米などの新興国を中心に販売拡大を目指す方針だ。4兆円達成へ向け「まずは買収した企業の収益を向上させる」と述べ、新たな企業買収よりも、足場固めを優先すると強調した。

 また、2014年に国内過去最高シェア15%に達したビール系飲料を、東京五輪開催の2020年までに20%にまで引き上げる目標を明らかにした。そのためのサントリーは、305ml缶で税込み315円前後と「ザ・プレミアム・モルツ」より20%ほど高い高級ビール「マスターズドリーム」をこの3月に発売する。新浪社長は「更なる高級ビールの訴求で、“プレモル”が日常化する」と述べたとも言う。ビール系飲料のシェアはアサヒグループHD、キリンHDに次ぐ国内3位だが、プレミアムビールに限ると1位、シェア52%だ。2020年には高級ビールだけで7~8割のシェアを目指す。また、ウイスキーをメインとしたスピリッツ事業(蒸留酒)では世界一を目指し、白州蒸溜所(山梨県)の能力増強を検討するという。

 サントリーが3月に市場投入する新製品「マスターズドリーム」が今夏のギフト商戦でどんな結果を出すか。アサヒのスーパードライもプレミアム化を志向する。サッポロのエビスも黙ってはいない。キリンのひとり負けが続くのか。国内酒類の動きから目が離せない。(編集担当:吉田恒)