1月30、31日の両日、エチオピアのアディスアベバで「アフリカ連合(AU)サミット」が開かれ、中国寄りのジンバブエのムガベ大統領が新議長に就任した。AU執行部が親中体制になったことを意味する。しかも、中国外務省はAUに代表部を開設すると発表した。
中国が対アフリカ戦略を強化する中で、日本政府が手をこまねいていたわけではない。日本は、1993年10月から「東京アフリカ開発会議」(TICAD)を通じて、アフリカとの関係強化に努めてきた。昨年から5年に1回のペースで開いてきたTICADを3年に1回、アフリカと日本で交互に開催する方式に切り替えることにした。2013年からは「日アフリカ資源大臣会合」も開催されている。昨年1月には安倍首相がコートジボワール、モザンビーク、エチオピアのアフリカ3カ国を訪問した。
しかし、こうした努力にもかかわらず、中国の攻勢に日本は劣勢に立たされている。中国は、人的交流やアフリカ人留学生の受け入れなどを通して、アフリカとの関係維持を行ってきたが、00年に「中国・アフリカ協力フォーラム」(FOCAC)を開始し、着実にアフリカとの関係を築いてきた。
中国とアフリカの貿易額は、1960年にはわずか1億ドルだったが、2000年には100億ドルに上昇、08年には1000億ドルを突破、日本とアフリカの貿易額を上回るようになっている。
昨年5月には李克強首相がケニアを訪問、ナイロビ=モンバサ間鉄道建設の融資協定に署名し、今年初めには王毅外相が同国を訪れ、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、南スーダンを鉄道で結ぶ計画を語った。
注目すべきは、ムガベ新議長下のAUが、欧米や世界銀行への依存から脱却しようとしていることだ。アフリカ諸国は、この新路線によって、欧米と歩調を合わせてきた日本よりも、欧米と一線を画してきた中国への依存をさらに深めていくかもしれない。
これまで、欧米諸国は中国の対アフリカ戦略を「新植民地主義」と批判してきた。しかし、アフリカ諸国は、人権や人道の立場で内政干渉する欧米の姿勢を批判的に見てきた。欧米と歩調を合わせてきた日本の対アフリカ外交は、曲がり角に立たされている。(編集担当:久保田雄城)