東日本大震災の発生当日、当時の内閣府特命担当大臣(金融)と日本銀行総裁は連名で「貸出金の返済猶予等被災者の便宜を考慮した適時的確な措置を講ずること」などを金融機関に要請した。それから 4 年が経過しようとしている。今年 2 月に金融庁が公表した「東日本大震災以降に約定返済停止等を行っている債務者数及び債権額」によると、被災 3 県で条件変更契約を締結した債務者は2万3374 先(住宅ローンを除く、2011年3月11日~2014年11月末)にのぼり、2014年11月末現在で約定弁済を一時停止している債務者はわずか 144 先(同)にまで減少した。
被災地の企業がこうした金融支援を受けながら復興していることが数字からも裏付けられている。しかし一方で、未曾有の災害で大きな打撃を受けた企業は、被災 3 県の企業ばかりではない。物流の混乱や原発事故による風評被害の影響は日本全国に及んだ。今でも震災の影響を受けた企業倒産は、広範囲かつ断続的に発生している。
帝国データバンクでは、東日本大震災により直接的な被害(物理的損傷等)、または間接的な被害を受けたことが取材で判明した企業倒産を「東日本大震災関連倒産」と定義し、震災直後から集計を開始している。今回調査の対象期間は 2011 年 3 月から 2015 年 2 月の 4 年間だった。
今回の調査によると、東日本大震災発生から4年間で、「東日本大震災関連倒産」は累計1726件発生した。負債総額は1兆5619億1900万円となった。4年目(233件)もなお、「阪神大震災関連倒産」の 1年目(194件)を上回るという。また、都道府県別に「東日本大震災関連倒産」の件数を見ると、東京都が409件で最多。以下、宮城県146件、茨城県94件、北海道・静岡県92件と続く。
業種別に4 年間の累計件数を見ると、トップはサービス業の380件となった。以下、卸売業 49件、製造業 337件の順で続く。年別の推移を見ると、建設業は1年目に120件にのぼったが、復興需要などのプラス要因も働き、4年目には29件と約4分の1に減少した。一方、震災後に自粛や風評被害により低迷した需要が戻らないなどの理由から、小売業やサービス業などの業種では、全体に比べ減少幅が小さかったという。
年別に件数の推移を見ると、4年目には西日本を中心に1件も判明しなかった県も散見されるなど、徐々に影響が薄まっている様子がうかがえるという。「東日本大震災関連倒産」のなかでも、福島第一原子力発電所事故の影響を受けた「原発関連倒産」は、4年間で180件判明した。構成比は、4 年目には15.5%に上る。(編集担当:慶尾六郎)