政府は2月24日、公的年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」の組織を抜本的に見直す組織改革法案を断念し、若干の見直しにとどめることを閣議決定した。
GPIFは、厚生年金と国民年金の積立金約130兆円を管理・運用する「世界最大の機関投資家」とされる。官邸の意向で、GPIFの資金を使ったPKO(プライス・キーピング・オペレーション)によって株価維持策が取られているとも指摘されている。
政府は昨年10月、GPIFの運用資産のうち60%を占めていた日本国債などの「国内債」を35%に引き下げる一方、国内株式を12%から25%に、外国株式を12%から25%に、外国債券を11%から15%にそれぞれ引き上げた。資産運用利益を高めるためだ。しかし、これは運用リスクが高まることを意味する。
民主党衆議院議員の岸本周平氏は2月19日の予算委員会で、GPIF運用見直しについて安倍総理を次のように批判している。
「国民年金、厚生年金のお金はこうして大きなリスクにさらし、一方で公務員の年金は一切株を買い増ししていない。国家公務員共済は国内株式8%のままいまだにポートフォリオは変えていない。誰がリスクの責任を取るのか」
だからこそ、塩崎恭久厚生労働相は、GPIFの資産構成割合の変更に合わせて、運用権限が理事長に集中している現在の「独任制」の仕組みを見直し、複数の金融の専門家によって運用方針を決める「合議制」に変更するよう求めたのだ。その結果、厚労相の諮問機関「社会保障審議会年金部会」の下に作業班が設置され、昨年末に改革案がまとめられた。
これに対して、合議制への変更によって柔軟な資産運用が困難になるとの反対論が噴出したのだ。塩崎厚労相に抵抗しているのは、世耕弘成官房副長官だと報じられている。
『Business Journal』(2月25日)によると、世耕氏がGPIFの運用を仕切る新設の最高投資責任者(CIO)に、個人的に関係が深い水野弘道氏を送り込み、水野氏に自由に運用させる体制を築こうとしたのが発端だ。水野氏は英投資会社コラーキャピタルでパートナーを務めていた人物だ。塩崎氏は、CIOひとりでは運用方針を決められない合議制に移行しようとしたというのだ。
合議制への変更という塩崎厚労相の方針は、このまま封印されることになるのだろうか。(編集担当:久保田雄城)