個人金融資産過去最高を更新 消費促進に欠かせない条件とは

2014年12月29日 19:45

画・個人金融資産過去最高を更新 消費促進に欠かせない条件とは

日銀は12月18日、7~9月期の資金循環統計を発表し、個人(家計)の金融資産が9月末の時点で過去最高の1,654兆円にのぼったことを明らかにした。6月末時の1,645兆円から、約9兆円増加したことになる。

 日銀は12月18日、2014年7~9月期の資金循環統計を発表し、個人(家計)の金融資産が9月末の時点で過去最高の1,654兆円にのぼったことを明らかにした。6月末時の1,645兆円から、約9兆円増加したことになる。

 個人金融資産は12年12月末で1,552兆円だったが、13年12月末で1,644兆円まで増え、今年に入ってさらに最高額を更新した。現金・預金は12年以降、前年比2%前後の水準を保ちながら増加。本年9月末では1.7%増の870兆円となった。

 さらに円安の影響と、輸出の好調で株価が上がり、個人が保有している株式や投資信託の評価額が上昇したことも、金融資産残高を押し上げる理由のひとつとなっている。投資信託では前年比14.9%増の86兆円、株式・出資金では前年比5.6%増の156兆円となった。

 総務省統計局の調べによると、個人金融資産の約8割は50代以上の世帯が保有しているものとなる。経済を活性化させ景気回復を促すためには、高齢者層が保有している金融資産を消費の原動力に回していくことが必要だと言われている。市場でも、少子高齢化により人口に占める高齢者の割合が増加していくことを見込んだシニア向けの商品開発が積極的に行われている。しかし依然として高齢者層の財布のひもは固く、効果はいまひとつのようだ。

 高齢者層が資産を溜めこもうとする理由は、年金問題や、医療費・介護費の負担増にあるだろう。日本の経済の先行きが不安定な上、年金生活を送る高齢者のほとんどは今後も収入が増える見込みのないため、貯蓄は守らなければならない大切なお守りとなっている。

 高齢者の不安が解消されれば、貯蓄を担保として保有する意味はなくなるだろう。しかし、福祉の充実を目標に消費税を引き上げることがこれまで何度も議論されてきたが、結果としては国民の不安を募らせてしまうという悪循環を引き起こしている。経済の循環を良くするためには、何より、政治の実行力にかかっているのではないか。(編集担当:久保田雄城)