成長するマレーシア経済 AEC発足を見越し、日本企業の動向も活発化

2015年03月14日 20:29

ローム

ローム・ワコー株式会社が、マレーシアの製造子会社ROHM ‐ WAKO ELECTRONICS (MALAYSIA)SDN.BHD.(以下、RWEM)に、地上3階建て、延べ床面積38,250平方メートルの新棟を建設し、生産能力を強化することを発表した。

 人口6億人の巨大市場「ASEAN経済共同体(AEC)」の発足を見込み、日本企業のアジア進出が加速している。AECが発足すれば、域内での市場統合による関税撤廃(モノの自由化)、熟練労働者の移動解禁(ヒトの自由化)、出資の規制緩和(サービスの自由化)などが進み、経済の活性化と発展が大いに期待される。

 そんなAECの中心となるのは、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムのASEAN主要6カ国だが、その中でもASEANにおける戦略的拠点として注目が高まっているのがマレーシアだ。

 これまでASEANに進出する日系企業の多くは、シンガポールやタイを重点に置いてきた。それに比べ、マレーシアはというと、戦略拠点という認識はほとんどされてこなかったのが現状だ。しかし、これまでの労働集約型・資本集約型から、イノベーションを重視して国内需要を強化する知識集約型の経済モデルへの転換を積極的に図り、地域統括機能や地域調達物流センター機能等を有する企業に対して、シンガポールやタイにも引けをとらない優遇税制などの措置をとりはじめたことで、急速に注目されるようになった。

 2014年はASEAN関連株で苦戦したものの、GDPは上昇しており、経済成長率も5%を推移している。しかも現在、マレーシアは労働力増加率が人口増加率よりも高くなることで経済成長が後押しされる、いわゆる「人口ボーナス期」にあり、2035年頃まで国内需要の拡大が見込まれている。そして何より日本企業として有難いのは、ASEAN諸国の中でも、とくに親日の国であるという点ではないだろうか。

 日本企業のマレーシア進出が活発になり始めたのは2011年頃からだ。それまで現地の販売代理店を通じて百貨店などで化粧品商品の販売を行ってきたカネボウ化粧品も、同年に現地法人を設立して自社による営業体制に転換したほか、日立製作所<6501>の連結子会社である日立キャピタル<8586>が、マレーシアでトラックのファイナンスを展開するFPC社を買収したのも11年だ。その後もじわじわと、マレーシア人気は高まっているとみられる。

 直近では、2015年3月11日、半導体大手のローム株式会社<6963>及びローム・ワコー株式会社が、マレーシアの製造子会社ROHM ‐ WAKO ELECTRONICS (MALAYSIA)SDN.BHD.(以下、RWEM)に、地上3階建て、延べ床面積38,250平方メートルの新棟を建設し、生産能力を強化することを発表している。RWEM新棟は需要が拡大するダイオードなどディスクリート製品の生産能力強化が主な目的で、同社によるとダイオードの生産能力は約2倍に向上し、さらなる需要拡大に向けた態勢が整うそうだ。あまり知られていないが、このRWEMはマハティール前首相が提唱したルック・イースト政策に沿って進出した、日系初の企業だという。

 2013年度の在アジア・オセアニア日系企業実地調査によると、マレーシアに進出している日系企業の63.8%が黒字で、他の国に比べて赤字割合が少ないことが報告されている。また、首都圏の鉄道拡張やクアラルンプール-シンガポール間の高速鉄道の建設計画など、インフラの整備も順調に進んでいることから、マレーシア経済の伸長に期待する声も多い。ASEAN統合に伴って、マレーシアの名を聞く機会も今後増えていきそうだ。(編集担当:藤原伊織)