いよいよ下がり始めた固定価格買取制度で、それでもまだまだ恩恵を得る方法

2015年03月21日 19:42

太陽光貸し

電気料金の高騰が予測される中、10Kwの太陽光パネルが載らない狭小な屋根でも数件分を一括することで大きな売電収入が得られる「屋根貸し共同事業」が注目を集めている。

 2012年7月にスタートした再生可能エネルギーの固定価格買取制度が功を奏し、日本国内では太陽光発電システムが目覚ましい普及を遂げた。個人の家屋だけでなく、自治体施設や企業の工場などの屋根に太陽光パネルのある光景は珍しいものではなくなり、郊外でも少し広い土地があれば、見渡せばかなりの確率で太陽光パネルのエリアを見かけるほどだ。

 一般社団法人新エネルギー導入促進協議会(NEPC)、一般社団法人太陽光発電協会太陽光発電普及拡大センター(J-PEC)の資料によると、2013年度末の時点での住宅用太陽光発電システム普及率はおよそ5.6%。一年後の現在は6-7%であろうか。また、現在はまだ導入していなくても、初期費用や維持費用の問題さえクリア出来るのなら、ぜひ検討したいと考えている家庭や企業も多いだろう。

 普及の背景には東日本大震災からの国民の防災意識の高まりもあるが、現実問題として家屋の屋根に設置することで将来にわたって固定価格の売電収入が得られるというのは、投資として大きな魅力がある。2012年度の42円(10kw以上の全量買取)という高額な売電価格に比べると、15年度で予測されている20円台後半という価格は見劣りはするものの、まだまだチャンスであることに変わりはない。初期費用やメンテナンス費用を極力抑えながら、売電の恩恵を効率よく得られる方法はないものだろうか。

 ここで注目したいのが「屋根貸し」という方法だ。「屋根貸し」とは、所有する屋根を太陽光パネルの設置場所として民間の発電事業者に貸し出す方法で、所有者は売電収入というよりも、発電事業者からまとめて屋根の使用料を受け取るというスキームになる。この方法はとくに地方自治体などで積極的に採用されており、各市役所などの施設のほか、例えば福岡県や岐阜県では公立学校の屋上や、神戸市では六甲アイランド地区の航空貨物上屋など、さまざまな場所が民間事業者に屋根貸しされている。

 発電事業者にとっても太陽光パネルの設置場所の確保は常に大きな課題であるだけでなく、土地を購入するよりも賃借した方が初期投資費用も抑えられる。たとえ賃借料を払っても、固定価格買取制度によって収益は確保できるので願ったりかなったりというわけだ。

 この方法は何も自治体だけのものではない。住宅メーカーでも、アキュラホームのように、この屋根貸しを積極的に提案している企業もある。同社では、太陽光発電導入の障害になっている初期費用とメンテナンス費用に着目し、屋根貸し共同事業とすることで住宅購入者の負担をゼロにした。しかも、10Kwの太陽光パネルが載らない狭小な住宅でも、数件分をアキュラグループで取りまとめることにより、10kw以上の買取価格での売電を可能にしたのだ。自治体の屋根貸しとは少し違い、屋根の使用料ではなく売電価格が配当される方式だが、その分、夏期などは大きな収入も見込める。

 買取価格は今後も引き続き下落していくとみられる。1kwあたりたった数円の差でも、買い取り期間の20年間という長いスパンで見れば、大きな差が生まれてしまう。(編集担当:藤原伊織)