東洋ゴム工業<5105>の製造した免震ゴムの性能不足問題の解明が続いている。3月21日には、免震ゴムのデータを改ざんした課長代理が転勤した2013年1月以降も後任の担当者がデータを改ざんしていたことが分かった。
国土交通省は東洋ゴム工業のデータ改ざんを受け、00年以降に交付した大臣認定の実態調査を開始したと20日発表した。この調査では性能評価の際に提出した試験の記録の再調査や、担当者への聴取を含めた自社調査を要請している。自社調査と聞くと甘い対応と考えてしまうが、17日の東洋ゴム工業明石工場での初めての調査の際、同省建築指導課田中敬三・建築安全調査室長は「1人でできる事ではない」とのコメントを残している。国交省の目はそんなに甘いものではない。
報告書の提出は4月20日まで、報告書に疑問がある場合は必要に応じて追加的な調査、ヒアリングを実施すると伝えている。脛に傷の無いメーカーにとっては迷惑な話ではあるが、消費者の不安、不信を取り払うには絶好の機会と考え真摯に取り組んでいただきたい。
疑問なのは、データ改ざんを東洋ゴム工業は何故行ったのかということである。東洋ゴムは07年に学校などに納入する断熱パネルのデータ改ざんという過去がある。その結果として当時の社長が引責辞任するという苦い思い出があるはずだ。「出荷を優先するためにデータ改ざんを行ったのではないか」とも言われているが、そうなれば過去の経験が生かされなかったことになる。
免震ゴムの市場は、阪神大震災以降急激に高層マンションなどでの採用が増えた。しかし、実際に採用しているのはビル全体の1%程度にしか過ぎない。だが、他の報道にもあるように、東洋ゴム工業の免震ゴムは、庁舎、病院を始め、消防署など災害が起きたときに拠点となる建物に採用されていた。国内のタイヤ需要が頭打ちになってきたゴムメーカーにとって免震ゴムはこの先大きく需要の増えるまさに希望の地だったのである。
そんな免震ゴム市場の現状は、業界トップのブリヂストン<5108>はシェア50%、一方の東洋ゴム工業のシェアはわずか3~4%に過ぎない。「出荷を優先するためにデータ改ざんを行ったのではないか」もしこの言葉通りであるなら、ものづくりをする企業としての姿勢が改めて問われるのではないか。(編集担当:久保田雄城)