この世の邪悪なるものが全て飛び出した後の「パンドラの函」の底には、ただ「希望」だけが残った。落ち穂拾いのつもりで東京市場の今週の希望を探しに行くことにしよう。
27日の日経平均終値19285.63円のテクニカル・ポジションは、27日は25日移動平均の寸前で下げ止まって折り返し、13日のメジャーSQ値19225円よりも上だったが、5日移動平均の19594円よりは下。25日移動平均の19078円に対する乖離率は+1.08%まで低下した。前週まで+5%に接近していたのがまるでウソのよう。75日移動平均は18032円、200日移動平均は16618円。
日足一目均衡表の「雲」は27日時点で17476~17716円と1569円も下にあるが、今週はその下限が17598円から17728円へ、上限が17995円から18215円へ上昇していく。上限が19000円を超えるのは4月下旬だが、一目均衡表の雲はコクーン(まゆ)のようなもので、外から中には入りにくいが、一度入ってしまうと外に出にくくなる性質をもつ。前週の「利益確定イベントショック」の影響でもし4月相場が18000円台に低迷してローソク足が「雲隠れ」するような状況になったら、混迷が長期化する恐れがある。
ボリンジャーバンドは、27日終値は25日線-1σの18674円と+1σの19482円の間のニュートラル・ゾーンに戻った。騰落レシオは26日は108.38、27日は101.23、ストキャスティクス(9日・Fast)は26日は82.33、27日は57.66、27日のRSI(相対力指数)は63%で、まるでバスタブの栓が抜けたかのように、それまでの「買われすぎ」は一気に流れ去り完全解消した。だからと言って「リカバリーの希望みつけた」「2万円に再チャレンジ」などと期待するのは能天気すぎる。
今週はパフォーマンスが比較的良い「SQ前週」だが、復活祭休暇前で週末3日にアメリカの雇用統計の発表があるので様子見になりやすいアメリカ市場の影響を受けるとみる。「日米連動脱却」はマーケットが強気で突っ走った前々週までの話で、為替の影響も元に戻るだろう。国内も31日期限の月末要因は、前週末に2日で460円下げてもなお日経平均は期初より4494円も高く、ドレッシング買いしなくても保有株式の評価損益は美人に見えるから「決算対策売り>ドレッシング買い」と思われる。4月1日発表の日銀短観は改善の可能性があるが、年度変わりでもあり積極的な買いは手控えられそうだ。
だが、それよりも厄介なのが、前週の権利確定イベントで2万円タッチの祝宴どころか約1時間で一気に490円安の地獄までみたことによる後遺症で、なかなかリスクオンできない「ヘタれたマーケット心理」。2~3月にアッパー系でさんざんトリップしてしまった東京市場はこの先、この「サイコの迷宮」にもがき苦しむことになるのかもしれない。ティモシー・リアリーには悪いが、ターンオンし、チューンインした後に待つのは、ドロップアウトということになるのか?
そのため今週の上値は、前週の週間高値と安値の中間点19438円への「半値戻し」は果たしても、ボリンジャーバンドの25日線+1σの19482円あたりが限界とみる。一方、下値はやはり、27日もサポートラインになっていた25日移動平均線(19078円)が目安になるだろう。もし19000円を割り込むようなら、6週間もアッパー系をキメ続けた東京市場の「バッドトリップ」は相当深刻だ。
ギリシャ神話のイカロスは、父親とともに迷宮(ラビリンス)に幽閉されていたが、翼を得て天に高く昇る。しかし太陽に近づきすぎたために翼を身体につないでいたロウが溶け、墜落してしまう。東京市場にとってそれは2013年5月23日のカタストロフの寓話だったが、残念なことに教訓は生かされず前週26日、27日に再び繰り返された。「株式市場は常に行き過ぎる」(クロード・ローゼンバーグ)は、マーケットにとって逃れられない〃宿業〃なのだろう。
その2年前の夏を振り返ると、「翼を失ったイカロス」日本株は約半年間、需給が狂ってゲリラ急落が頻発する混迷と不安のラビリンスをみじめにさまよい続け、「アベノミクス相場の暗黒時代」だった。歴史は繰り返す。一度目は悲劇として。では二度目は喜劇として笑って済ませられる、か?
やけに高揚した権利確定イベントの「祭りのあと」の虚脱感は、簡単にぬぐい去ることなどできない。ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは19000~19500円とみる。「2万円チャレンジ」は失敗に終わったが、いつか再びチャレンジの機会はめぐってくるだろう。20世紀を代表する劇作家サミュエル・ベケットはこんなことを言っている。「試してみた? 失敗した? かまうことはないよ。もう一度やって、もう一度失敗して。でも今度は上手に失敗するんだよ」(編集担当:寺尾淳)