フェイスブックは3月17日、インターネット上で利用者同士の現金の受け渡しを可能とする無料送金サービスを開始すると発表した。まず、数カ月以内に米国で開始する。送金は、事前に米国の銀行が発行するデビットカード情報を登録し、メッセージのやり取りなどに使うアプリ「メッセンジャー」を通じて行う。
フェイスブックは、広告とゲームで1日100万件の支払いを処理してきた実績があり、昨年6月にはメッセンジャー事業のトップにペイパル前社長のデービッド・マーカス氏を迎え、送金サービスの準備を進めてきた。
この分野では、イーベイがペイパルを通じて、電子メールや同社のアプリを使った消費者同士の決済サービスを行っている。一方、イーベイが2013年に買収した「ベンモ」も送金サービスを行っており、米国では大学生の間で人気が高まっているという。ともに、支払手段として登録できるのは、銀行口座、デビットカード、クレジットカードの3種類。ただ手数料が無料なのは、ペイパルでは銀行口座のみ、ベンモでは銀行口座とデビットカードのみ。
一方、米スナップチャットや中国の騰訊控股(テンセント)が運営する「微信(ウィーチャット)」も、対話アプリを使った送金サービスを行っている。
こうした既存サービスにとって、メッセンジャーの参入は脅威だ。メッセンジャーには、スタンプ、動画、写真、グループチャット、無料音声通話などの機能があり、登録者が利用する頻度は高い。別のアプリを開くことなく、メッセンジャー上で簡単に送金ができれば、非常に便利だ。しかも、手数料もかからない。
広告で巨額の売上を上げているフェイスブックは、送金サービス自体で儲けを追求する必要はなく、送金サービスを付加することによってメッセンジャーをより魅力的なものにすることが狙いとされる。
昨年11月、メッセンジャーの月間アクティブ利用者数は5億人を超えた。この利用者数の多さと利用頻度の高さによって、メッセンジャーが友人間などの送金のスタンダードになる日が来るかもしれない。(編集担当:久保田雄城)