■GMS(総合小売店舗)に逆風が吹いている
小売業の総合流通、コンビニ業界主要各社の2015年2月期本決算がほぼ出揃った。
総合流通グループは、セブン&アイHD<3382>はトータルの連結決算では営業収益7.5%増、営業利益0.1%増、当期純利益0.6%減だったが、イトーヨーカ堂などGMS(スーパーストア事業)分野は営業収益0.1%増、営業利益34.8%減と採算が大きく悪化した。イオン<8267>はトータルの連結決算では営業収益10.7%増、営業利益17.5%減、当期純利益7.7%減と増収減益で、3期連続の営業減益。イオンリテール、イオン北海道、イオン九州、ダイエーが属するGMSの分野は営業収益9.9%減、営業損益は16億円の赤字で全体の足を引っ張っていた。ユニーGHD<8270>はトータルの連結決算でも営業収益1.3%減、営業利益20.1%減。当期純利益(最終損益)は不採算店舗閉鎖の減損損失を計上して24億円の赤字と悪かったが、アピタなどGMS(総合小売事業)は営業収益2.8%減、営業利益26.3%減で、これも全体の業績を押し下げた。総合流通グループの事業のルーツで、成長・拡大の核になってきたGMSにはいま、逆風が吹いている。
コンビニは、全社の全店売上高は今年2月まで24ヵ月連続増収だが、それから開店後12ヵ月未満の新店分を除いた既存店売上高は、消費増税が実施された昨年4月から11ヵ月連続で前年同月比マイナスという低迷が続いている(日本フランチャイズチェーン協会「JFAコンビニエンスストア統計調査月報」)。それを旺盛な新規出店分でカバーすることで増収が続くという構造になっていて、決して好調とは言えない。
セブン&アイHDのコンビニエンスストア事業(セブンイレブン)の営業収益は7.8%増だったが、営業利益は1.1%増でその前の期の16.1%増から大幅にペースダウンした。ローソン<2651>は営業総収入が2.6%増だったが、営業利益は会社予想を下回る3.5%増で、不採算の144店舗について特別損失を計上したため当期純利益は13.9%減だった。セブンイレブンに対し同数の大量新規出店の「ガチンコ勝負」を挑んでそれが裏目に出たファミリーマート<8028>は、営業総収入こそ8.3%増だが営業利益は6.7%減、当期純利益は13.5%減で、今後はユニーGHDとの経営統合で出直しを図る。
■コンビニは大量出店から転換し中身で勝負
小売業全体の今期、2016年2月期の業績見通しは、消費増税後1年を経過して反動減の影響が薄らぐ上に、前年上半期(3~8月)の業績は3月を除けば低迷していたので、その反動で中間期は伸び率で良い数字が出るという効果もあるので、おおむね年間を通じて好調に推移するとみられる。全体の約8割が増収増益という報道もあり、業態別では前期が悪かったGMSとコンビニの復調が見込まれているが、はたしてうまくいくかどうか。
総合流通グループのセブン&アイHDは営業収益8.8%増、営業利益4.8%増で、前期は減益だった当期純利益も4.7%増を見込んでいる。そのうちGMS(スーパーストア事業)は営業収益2.4%増、営業利益63.4%増を見込み、営業利益は前期の大幅減益からV字回復の見込み。前期は2ケタ営業減益で当期純利益も減らしていたイオンは売上高13.0%増、営業利益23.8%増、当期純利益1.0%増と回復を見込んでいる。GMS分野の見通しは公表されていないが、今期はダイエーの店舗の多くを「イオン」に衣替えするなど、事業再編によって営業赤字に陥った前期からの立て直しを図っていく方針。前期が減収減益、最終赤字だったユニーGHDは、新店効果で増収を見込み営業収益は1.7%増、営業利益は16.1%増。当期純利益は前期の赤字から黒字化して48億円を見込んでいる。食品のプライベート・ブランド(PB)も見直す。GMS(総合小売事業)は営業収益2.1%増、営業利益12.1%増を見込み、売上でも利益でもV字回復を目指す。
コンビニのセブンイレブン(セブン&アイHDのコンビニエンスストア事業)は、営業収益は10.0%増の2ケタ増収、営業利益は7.0%増を見込んでいる。商品の品質向上で客単価アップを目指す。ローソンも「成城石井」の買収効果が出て営業総収入は16.1%増の2ケタ増収、営業利益は0.7%増を見込んでいる。前期は大幅減益だった当期純利益は7.7%増。佐川急便のSGHDと共同事業会社を設立して店舗の周囲500メートル圏内の宅配に乗り出すなど事業戦略は積極的。前期は減益決算でユニーGHDとの経営統合委員会がすでに発足したファミリーマートは韓国から撤退し、出店を抑えめにする中期計画を発表した。今期は営業総収入10.0%増、営業利益16.0%増の2ケタ増収増益を目指すが、リストラ費用の負担が発生し当期純利益は18.2%減を見込んでいる。
各社とも、今期は近年の大量出店競争から方針を転換して商品やサービスなど中身で勝負するようになりそうで、新規出店の増加分で既存店のマイナス分をカバーしきれずに通期で減収になったとしても、営業増益を果たせばそれは吉と出たと言えそうだ。(編集担当:寺尾淳)