今年の夏は暑くなりそうだ。気象庁の予測では、今年も全国的に厳しい夏になりそうで、とくに関東から東海を中心に広い範囲で猛暑が予測されている。また、梅雨明け後は北陸や近畿から九州にかけて雨の日が多くなりそうだという。
暑くなってくるにつれ、テレビでもエアコンのCMを目にする機会が徐々に増えてくる。今や、エアコンはどこの家庭にもあるものだ。新規というよりは買い替えの需要の方が多いだろう。では、エアコンの買い替えはどのようなタイミングで行うべきなのだろうか。
エアコンの寿命は一般的に7年程度といわれている。モーターなどの構成部品の保証値やメーカーのアフターフォローの期限などから割り出した目安だ。もちろん、それまでに買い換えるケースもあるし、実際は10年を超えても使い続けるという家庭も多い。買い替えの動機としては、「冷えが悪くなった」「異臭がする」「音が大きくなった」などの故障的な理由のほか、「省エネ効率」を意識した買い替えも多いという。ところが、実はハード面での冷却効率というのはほとんど進歩していないそうだ。
エアコンに使用されている冷媒ガスは規格化されているので、メーカー各社で品質に差はない。また、熱交換器の材質や配列も各社ほぼ同等のものを使用しているので、画期的に熱伝導効率の高い新素材が発見され、実用化されることでもない限り、基本的な冷房効率としては大きな差はない。各社の差は、ハード面での基本性能ではなく、ソフト面での「冷やし方」でいかに省エネ効率を上げているかになる。たとえば、部屋の間取りや人のいる場所を感知して重点的に冷やす場所を自動で決める、三菱電機<6503>の「ムーブアイ」や、部屋の中の人や物を認知して自動でパワーセーブを行う「ひと・ものセンサー」のほか、日射しも見分けてムダな電力消費をセーブするパナソニック<6752>の「エコナビ」など、センシング機能の充実が他社との差別化のカギになっている。
そんな中、半導体大手のローム<6963>が4月1日、省エネ家電や産業機器の低消費電力化に貢献する高効率のMOSインテリジェントパワーモジュール(MOS-IPM)「BM65364S-VA/-VC(定格電流15A、耐圧600V)」を新たにラインアップに加えたことで、エアコンを始め、省エネが求められる様々な機器で省エネ効率が大幅に改善されそうだ。
同社がこのIPMを開発した背景には、省エネ法の改定によって、製品の使用実態に近いエネルギー消費効率を示すAPF(Annual Performance Factor)の表記が必要となったことがあげられる。APFとは、たとえばエアコンを年間を通じて使用したとき、1年間に必要な冷暖房能力を、1年間でエアコンが消費する電力量(期間消費電力量)で除した、性能評価指標だ。この値が大きいほど省エネ性が高いといえる。APFを達成するためには、約15Aの電流を必要とする急速運転時よりもむしろ、1~3Aの低電流ながらエアコン使用の大半を占める定常運転時の低消費電力化が必須となる。
ロームは自社製PrestoMOSを採用することで、この定常運転時(1~3A)の導通損失を大幅に低減することが可能となり、自社独自のゲートドライバの回路技術を組み合わせることでIGBT-IPMと比べて低電流域での損失を約43%削減することに成功した。これにより、業界トップクラスの低消費電力で、アプリケーション全体の省エネ化に貢献するMOS-IPMを産みだしたのだ。
我々が普段、何気なく使っているエアコンの中には、日本の熱い技術者たちの技術の結晶が詰まっている。それを思うと、少々暑くても、今年の夏は闇雲に温度を下げず、設定温度を少し高めにして、我々も少しでも省エネに貢献したいものだ。(編集担当:藤原伊織)