ドイツが総力を挙げて取り組むプロジェクト「インダストリー4.0」(I4.0)が、動き始めた。4月中旬に同国のハノーバーで開催された産業見本市「ハノーバー・メッセ2015」で、I4.0が主要テーマの一つとして掲げられた。
I4.0は、工場のデジタル化を目指すもの。製造に関わる機械をネットワークにつなぎ、開発・生産・流通などあらゆる工程で扱うデータを共通化する。これによって、開発から生産、流通までの情報をまとめて管理できる「スマート工場」が実現する。開発・生産・流通の情報をリアルタイムで収集・分析して、自動的に生産量を調整できるようになる。さらに、大量生産品(マスプロダクション)と同等の効率やコストで、顧客の要望に合わせたカスタマイズ製品を生産できるようになる。「マスカスタマイゼーション」の実現だ。
I4.0は、18世紀後半の「蒸気機関による自動化」(第1次産業革命)、20世紀初頭の「電力の活用」(第2次産業革命)、1980年代以降の「コンピュータによる自動化」(第3次産業革命)に次ぐ、「IoTによる自動化」(第4次産業革命)と位置づけられている。
ドイツが2011年にI4.0を打ち出した背景には、低コストを武器に追い上げる新興国企業と、製造領域への進出を加速する米IT企業に、はさみ撃ちされるという危機感があった。
ドイツの狙いは、I4.0をまず国内で標準化させ、次にEUで標準化させ、それを世界に輸出することだとも指摘されている。
I4.0の推進力は、ドイツの大手電機メーカー・シーメンスとソフトウェア会社SAPだ。シーメンスは、「ハノーバー・メッセ2015」で、すでに香水生産の「マスカスタマイゼーション」を出展している。
I4.0には情報セキュリティの確保などの課題もあるが、世界はI4.0シフトを敷きつつある。すでにドイツは、インドや中国との連携を強めており、日本企業もI4.0への対応を迫られている。(編集担当:久保田雄城)