日本郵政グループの日本郵便は15日、宅配便サービス「ゆうパック」の個人向け料金を8月1日より1個あたり約40円値上げするとの発表を行った。値上げの理由について日本郵便は、全国的な人手不足を背景とする人件費の上昇に対応するためとしており、これにより年間で28億円程度の増収効果があるとの見込みを示している。値上げは消費税増税などを除くと、1992年11月以来約23年ぶりのこととなる。
今回の値上げにより、最も料金が安い「60サイズ(荷物の3辺の合計センチ)・同一都道府県内宛て」が80円値上がりして690円となり、「60サイズ・第1地帯(近隣の都道府県)宛て」が30円値上がりして740円となり、それぞれの価格差は小さくなる。日本郵政はこうした値上がりによる顧客離れを防ぐために、継続的に利用している顧客への割引額や、個人利用者の7割が使う「持ち込み」の割引額を拡充するなどの対応をとることで、ヤマトホールディングス<9064>や佐川急便などとの競争力の維持に努める。そのほか、11月より配達予定日を電子メールで伝える登録制サービスを開始することで、「ゆうパック」の利便性を向上させるとしている。
現在、郵便物の取り扱い数は減少し続けており、こうした状況を受けて日本郵便では、宅配便などの事業拡大に力を注いでいる。しかし「ゆうパック」を含む日本郵便の郵便・物流事業は14年度に3期ぶりとなる103億円の赤字、さらには取り扱い数の増加に対して配送体制の整備が追い付かず、人件費もかさむ結果となった。これらの赤字や増加した人件費を、今回の値上げにより吸収したい考えだ。
しかし昨年度はヤマトホールディングスや佐川急便らが行った実質値上げに対して、日本郵便は料金を据え置き、これにより「ゆうパック」の取り扱い数を大きく伸ばすことができたが、今回の値上げにより同様の伸長を期待することは難しくなるだろう。日本郵便は、当初の予定より1年遅れの16年までに「ゆうパック」を黒字化する計画だが、はたしてその計画通りに事が進むかは現時点では見通しが立たない状態だ。(編集担当:滝川幸平)