安保法制 国会またぐ審議への覚悟見せず 総理

2015年05月21日 08:57

 安倍晋三総理は20日の党首討論で維新の党の松野頼久代表が安保法制に関する国会審議に「国会をまたぐ覚悟でしっかり審議時間を」と質したのに対し「しっかりした議論を行うのは立法府の責任と思う。だから早くやりましょう。説明に時間がかかるから」と翌日からでも審議入りするよう求めた。

 しかし、野党は審議入りの前に法案(条文)を熟読し、理解を深めたうえでなければ審議できないため、審議入りするまでに一定の時間が必要としており、来週からの審議入りで、熟議をしたい意向だ。「しっかり審議の時間を」との求めを逆手に取った格好。安倍総理は国会をまたいでの審議への覚悟は見せなかった。

 また安倍総理は民主党の岡田克也代表との党首討論時に野次が多く飛んだことをあげ「説明を始めたら野次が轟轟とくる。こういう姿勢では冷静な議論はできない。しっかりと冷静に起っている現実を見つめていくことが求められている」とし、「北朝鮮は数百発の弾道ミサイルを配備していて、それに載せることが可能な核開発も進んでいる。スクランブル(発進)もこの10年で7倍に増えた。これが現実で、この現実を踏まえ、立法府の責任は何かを考え、決めるべきは決めていく」とするとともに「もちろん、国会でしっかりと深い議論をして頂きたい」と答えた。
 
 この日、松野代表は「安保法制の議論で、民主党・岡田克也代表と安倍総理のやり取りを聞いていても、ほとんど国民の皆さんはわかりづらいと思う」と指摘。政府・与党から「安保法制を8月までに通してしまおうという声が聞こえてくるが、よもや、そんなことはないですね」と期限ありきで成立をめざせるような法案ではないことを強調し、政府・与党を強くけん制した。

 松野代表は「さきのPKOの時、停戦合意のところに自衛隊を派遣しようとした法案でも3国会(の時間を)先人たちはかけている。こうして、しっかりとした国会審議をすることで国民の間にも理解が広がり、問題点やリスクも理解され、それで今、PKOはしっかりやっている」と重要な法案には時間をかけてきたと提起した。

 松野代表は「法案を通すことだけを優先した安保法制の議論、特に、戦闘中のところに自衛隊が送られる可能性を秘めている法案が10本も出ているのだから、国会をまたぐ覚悟で国会審議に重きを置いて、審議の時間を作って頂きたい」と求めた。

 また「今回の安保法制は今までの安全保障の状況が一変するターニングポイントになるかもしれない大きな法案だ。野党の立場だが、(国会議員の)バッジをつけて、この法案に携わる以上、後世に責任が持てるような姿勢でしっかり審議していきたい」と強調した。

 また安保法制を議論する特別委員会を衆議院に設置することが19日決まったが、松野代表は「委員会の委員が45人だったら少数政党が入れないから50人にしてほしいと言ったのに、45人で採決し、少数政党を排除した委員会にした」と、議員定数削減問題で少数政党の意見も入れる必要があるからと少数政党を尊重しているとする安倍総理の矛盾を突いた。松野代表は「国民の声を聞いて、しっかり議員定数削減をしてほしい」と身を切る改革についても早期の実現を求めた。(編集担当:森高龍二)