今や、世界のデスクトップOSのシェア9割を占めるといわれるWindowsが登場したのは1985年。今からちょうど30年前のことだ。以来、2012年に発売された最新版のWindows8に至るまで、何度もバージョンアップを繰り返したものの、その人気は衰えることなく、Macやlinuxなどの競合を抑えて利用者の支持を集め続けている。
Windows OSが30年も人気を維持し続ける秘訣は何だろう。Windows登場以前、コンピュータは特別な知識と技術を持った人だけの、特別な道具だった。それを本当の意味でパーソナルなコンピュータ、「パソコン」に変えたのは、Windows OSやMacの登場によるところが大きいだろう。プログラムやC言語などを知らなくても、特別な教育や講習を受けなくても、今のパソコンは誰でもすぐに扱える。マウスをクリックするだけで次々と新しい知識の窓が開かれるこの環境がなかったら、コンピュータは今もなお、専門家だけの特別な道具に過ぎなかっただろうし、今日の様々なIT技術の発展もこれほど目覚ましくはなかっただろう。
WindowsとMacがよく比較されるが、単純にシェアだけを見るとWindowsが圧倒的に勝っている。しかし、発売当初はWindows Osの性能はMacのそれに遠く及ばなかった。それでもWindowsが圧倒的なシェアを獲得するに至ったのは、どうしてだろうか。単に戦略や資本力だけの問題ではない。実は、WindowsとMacは全く異なる概念を持っている。MacはOSのみならず、ハードウエアを含むシステム全体を構成するものであるのに対し、Windowsは、IBM互換機に搭載される汎用のOSのみを指すのだ。簡単に言ってしまうと、Macはより専門的に、個人向けにカスタマイズされたパソコン、Windowsは皆で使える互換性の高いパソコンという感じだろうか。
面白いのは、ちょうど30年前に発売されて、今なおロングセラーを続ける商品にこれと似た傾向が見受けられることだ。
例えば、ヤマハ発動機<7272>のオフロードバイク「SEROW 250」もその一つ。「SEROW 250」の生みの親といわれる同社MS開発部(当時は走行実験部門(当時)の近藤充氏いわく、発売当時、オフロードバイクは競技用モデルのように先鋭化が進んでおり、数値的に優れたモデルが良いとされていた時代だったという。しかし、そこに危機感を感じた近藤氏らは時代の流れに逆行するように「もっと気軽に遊べる敷居の低いモデル」の開発を行った。それが「SEROW 250」だ。スペックに華がなかったため企画段階では企画や営業部門からの反応は散々だったそうだが、溶接で自作したフレームに既存のエンジンを載せて試作車を手づくりし、実際に関係者たちを連れて、山野の中を走らせたところ、最新の高性能モデルとは違った面白さを感じてもらうことに成功し、商品化の道を得た。そして「SEROW 250」はその後、30年間で累計販売台数10万台を超えるロングセラー商品となった。
また、同じく1985年に発売された日清製粉<2002>の「お好み焼き粉」も、30年の時を超えて今なお愛され続ける商品だ。現在、市場規模100億円以上を誇る日清製粉のお好み焼粉シリーズ。そのロングセラーの秘訣もやはり、専門家でなくとも美味しいお好み焼きを誰でも気軽に家庭で楽しめるというところにあるのではないだろうか。
技術の進化は日進月歩で、今年も様々な分野で新商品や新技術が開発されている。しかし、30年後の最前線にどれだけ残っているだろう。どれだけ時代や技術が変わっても、ロングセラーとなる理由は変わらないのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)